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2016年6月26日 (日)

小説「楫取素彦物語」第137回

 三人は興奮する胸を押さえ切れず、名前を告げて県令への面会を求めると、許可が出た。

「ははあ、やはり君たちであったな。群馬の県会がとんでもない大仕事をやった。君たちが言っていた群馬の奴隷解放が大きく動き出すぞ」

 楫取は愉快そうに言った。

「群馬が新時代の風をまともに受け止めています。生糸で金を稼ぐだけではない。人間を大切にするという大旗が立ち上がろうとしています。道徳教育を進める大きな力も生れます。これらは一つになって誇れる群馬の柱になります。人間の尊重、平等は新しい時代の世界の正義ですね。それを群馬で打ち立てるとは何と素晴らしいことでしょう。県令閣下、頑張りましょう」

 五平太が言うと他の二人も興奮した声を挙げた。

「そうです」

「そうです」

 楫取は三人の若者を見て大きく頷いた。楫取の胸には寿の顔が、そして松陰の姿が甦っていたのだ。

 三人の喜ぶ顔を見ながら楫取言った。

「これからが勝負なのだ。力を合わせねばならない」

 翌四月十四日、県令楫取は公娼廃止を布達した。それは五年の猶予を与えるもので明治二一年六月限りで廃止するというものであった。これは、その後紆余曲折を辿る。それは廃娼ということが如何に大きな社会的課題であるかを物語るものであった。しかし、人権史上の金字塔を打ち建てるスタートたる出来事であった。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

 

 

 

 

 

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