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2016年6月19日 (日)

小説「楫取素彦物語」第136回

明治十五年の議会

 

 

明治十五年の三月議会で「娼妓廃絶の建議」をめぐり激しい議論が闘わされた。

この建議案の大要は、先に出された請願の趣旨を踏まえたものであった。

「我が群馬県ほど娼妓貸座敷の多いところは隣県と比べて他にない。今、その害二、三を挙げてみる。倫理をやぶり風俗をこわす。資産を失い産業をだめにする。少年子弟の前途の方向を誤らせる。父子夫婦を離散させる。その他盗賊の考えを起こさせ、博奕の原因をつくる。このようにおよそ、人間のすべての悪事は皆この娼妓貸座敷に根ざさないものはない。だから、娼妓の廃絶を県令閣下に建議したい」

では、審議における議員の発言状況を見る。

眞下珂十郎(碓氷郡出身)

「およそ娼妓ほど世に害あるものはないのだから、諸君、この建議を異議なく通過させ速やかに県令閣下に上申し、これを第一番に我が県で実施し、日本全国に波及させよう」

 五代政五郎(那波郡出身)

「娼妓を廃絶すれば他にこれに倍する弊害が生ずるから反対である」

 反対論の中で筋の通った論を展開したのは同じ那波郡出身の野村藤太だった。

「娼妓廃絶は表面の理論としてはすこぶる当を得ているが今日の状況からすれば弊害が続々と出て、公許の時より悪くなる。密売淫が増え、梅毒、姦通が増える。その例が一度、廃娼を実施した埼玉県だ。私は廃娼論は施政を知らない道徳先生の坐上の論だと考える。生兵法は大怪我のもという古い諺があてはまるのではないか。私はこの建議が消滅することを望む。

そして、このような建議をこの貴重な群馬県議会の意見として上申することは即座に中止していただきたい

 野村のこの発言に碓氷郡出身の湯浅治郎が強く反発した。

 

※土日祝日は、中村紀雄著【小説・楫取素彦】を連載しています。

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