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2016年2月14日 (日)

小説「楫取素彦物語」第95回

は、ポーハタン号で松陰と会ったという人と話したことがある。この人は、下田の浜で松陰と会話し、文書を手渡されたと申した。異国語が分からないのにもかかわらず話しかけて来た大胆さに驚いていた。しかし、チンプンカンプンの中で、ありがとう、サンキューが感謝を伝える同じ意味の言葉と分かり、お互い感激して握手をしたそう。それだけではない。ペリーに書いた文書は、日本の文字が分からぬ異人にも、人間の心が伝わる不思議な力を感じさせたという」

「そんなことがあったとは。松陰の大胆さと人間を信じることを示す姿で

楫取が感じ入った様子で言うと、万次郎はさらに続けた。

「ペリーが後に語ったそうだ。それは松陰が小舟で軍艦に近づき、刀を小舟に残し舟をけって、乗り込んだ姿に感動したというのです。日本人という国民は、命を捨てても新しい知識を得ようとする好奇心をもっている。この民族の将来は洋々たるものだろう、と話したというのです」

「うーむ」

楫取は思わず唸った。

それを見て万次郎は強い口調で言った。

「松陰の行動は、日本人の心意気を天下に示した。これからの日本民族は鎖国から抜け出して世界に出なければならない。松陰はたとえ言葉や文化が違おうと、人種の優劣があろうと、それを乗り越えて前に出るという勇気と気力と誇りを示した。それこそ松陰の最大の功績だ。はたまたま運にめぐまれてアメリカに渡ることが出来た。松陰は、アメリカ行きは果せなかったが、巨大な軍艦に挑戦し、堂々と意志を伝えた。この姿こそ、これから長く日本人が手本とすべきことだ」

万次郎は瞳を輝かせて語った。自分の海外の体験を踏まえて日本人の姿はかくあるべしという思いなのである。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

 

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