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2016年2月11日 (木)

小説「楫取素彦物語」第93回

「ジョン万次郎。土佐の漂流民の」

楫取の驚く顔を愉快そうに眺めながら幻馬は言った。

「これは奇遇でございますな。一度、ぜひお会いしたいと思っていました」

「吉田松陰殿の義弟でいらっしゃると聞きました。実に惜しい男でしたな。下田踏海を実行した松陰殿の胸には私の漂流があったと聞きます。松陰殿に会いたかった。あなたに会えたことはまるで松陰殿に会ったように思えます

「振り返ればまことに感無量です

幻馬がこう言って口を挟んだ。

「太平洋が新しい時代を開いたの。漁民の少年を黒潮がアメリカに運んだ。少年は進んだ社会を学び黒潮に乗って帰ってきた。それがこの万次郎なのだ。万次郎の話は黒潮が語る奇跡であった。それを熱い心で受け止めたのが馬だった。馬が動き薩長同盟が出来た

幻馬は話すのを止め、遠くを見る表情をした。そして、口を開いた。

伊之助殿、いや、今では楫取素彦殿であったな、あなたが下準備で苦労したお陰で話がとんとんと進んだ

幻馬は笑顔を作って楫取に向け、楫取は小さく頷いた。

この薩長同盟の力で幕府は敗れた。土佐ではこれも黒潮の奇跡と大騒ぎなのだ。それに大政奉還だが、慶喜があのように直ぐに決断するとは思わなかった。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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