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2016年2月21日 (日)

小説「楫取素彦物語」第97回

この時、それまで黙って聞いていた幻馬が口を開いた。

「長崎の平戸は鎖国の日本に開かれた小さな窓であった。は、ここを拠点に情報を集めてきた。そこから見えてくるのは目もくらむ世界の情勢であった。侵略で迫る大魔王の姿。人間の差別を開放する巨大なうねり。そこへと飛び出そうとする若者がいた。松陰だった

「その通りです」

楫取が興奮したように口を挟んだ。

幻馬は続けた。

これからは第二、第三の松陰が現れるだろう。その先は誰もが望めば異国へいける時代。この国を作り変えねばならん。そのために情熱を傾けてるのが土佐のは、松陰なき今、馬に日本の未来を託そうと思っている

この時、楫取が発言を求めた。

馬殿がここにいれば実に愉快であろうな。私は、今、先年、宰府で馬が言った言葉を思い出していました。差別のない平等の社会を作れば押し込められている無尽蔵の人材が一斉に力を発揮する。頭を押さえられて心を閉ざした国民と誰もが夢をもって国を支える国民の違い。国力の違いはここにある。馬殿は自信をもって、そう私に訴えていました」

「その考えを馬の心に植えつけたのがここにおいでのジョン・万次郎だ。は、は、は」

幻馬が愉快そうに笑った。幻馬の笑い声を受け止めるように万次郎が言った。

馬殿は、今何をしているだろうか。京には刺客がうようよしている

「命を大切にせよと忠告しているがちと心配な。大政奉還により、幕府が倒れた。これからが彼の出番なのに、浮かれて大酒でも飲んでいる時襲われたら、ことだな」

幻馬が真顔で言った。

 

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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