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2016年1月11日 (月)

小説「楫取素彦物語」第85回

「それは容易なことです。木戸に異論はあるまいと思うが、書状にて問い合わせるゆえ、返事が来るまでお待ち願いたい

 伊之助は早速、次のような書状を認(したた)めた

一筆参らせ候。今、藩命により太宰府に帯在中にござ候。三条卿に会い、時局の大変なることを聞かせられ、卿は薩長の反目を天下の為ならずと大いに憂いおる風に拝察いたし候。過日、土佐の坂本馬いう者、薩摩の西郷等と話した後、太宰府に参り、我を訪ね候。この男の申すには、薩長の反目を、天下のために解消し、両藩手を握る為の仲介の役を果たしたい、ついては木戸殿に会いたいが意向を伺って欲しいとのことゆえ、貴殿の指示を仰ぐべく一筆啓上つかまつり候。

 木戸孝允殿         塩間鉄造

 

 早速木戸から返事が来た。

坂本なる者に来てもかまわぬと伝えてくれ、今馬関に散在している各部隊のものにも粗暴の事をせぬように注意しておくから気縣りなく来るように言うてくれ

細々と書かれ、なかなかの熱の入れようであった。

 こうして、馬は馬関に渡ることになった。馬が馬関に旅立つ前夜、御高祖頭巾のお綱が風のように伊之助の前に現われた。お綱は言った。

幻馬が例の所で待っています。今、道筋は大丈夫ですが念の為私が先を走ります

伊之助は直ちに宿を出た。お綱の身のこなしは素早い。ある時は、黒い塀にぴたりと身を寄せて塀に吸い込まれるよう見えた。

これはますますもってくの一だわい

と伊之助は舌を巻いた。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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