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2016年1月 9日 (土)

小説「楫取素彦物語」第83回

 伊之助は再び幻馬に会った。話す前に全ては分かっているような顔をしている。

(妙な男だ)

伊之助は心でつぶやいた。

馬と申す男、薩摩と長州が手を握ることに役割を果せる人物なら会わしてくださらんか」

「もちろん。天下のために会ってくれ。おぬしは歴史的役割の一端を担うことになる。今、公儀の目は誠に厳しい。馬はお綱に案内させよう」

 夜陰に乗じて御高祖頭巾のお綱は一人の若者を導きそして、風のように去った。

 無造作に髪を束ね日焼けした男は言った。

「土佐の坂本す」

「長州の塩間鉄造です」

「は、は、は、小田村伊之助殿、御苦労なことです」

 馬は快活な笑い声を発した。

「吉田松陰の義弟と伺っています。惜しい男をなくしました。久坂といい、高杉といい、力を発揮するのは皆軽輩の若者。ここにこの国をつくり替える秘密がある

龍馬の言葉は、時代の本質を衡くものとして、伊之助の耳に小気味よく響いた。

差別のない平等の社会にすれば、押し込められている無尽蔵の人材が一斉に力を発揮できるのだ。アメリカでは見識が優れた人物なら一介の農民でも国王になれるという。これは、実際にアメリカを見た我が藩のジョン万次郎に聞いた話だ。どうだ、頭を押えられて心を閉ざした国民と誰もが夢をもって国を支える国民の違い。国力の違いはここにある」

 馬は一気に語った。

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

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