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2015年11月23日 (月)

小説「楫取素彦物語」第66回

 吉川監物公とは大論争になった。

「幕府と争うなど無謀ではないか。一歩誤れば藩の滅亡を招くぞ」

 監物公は大反対であった。

「外国に屈してずるずると譲歩を続ければ長州が亡びる前に日本が亡びます。孝明天皇の御意向もそこにあります。敬親公は不退転の決意です」

 伊之助の目にも死を賭する決意が窺えた。監物公は、最後は本藩の考えがそういうことならばということで同意した。

 長府公の説得はもっと大変だった。藩主は重病と称して会ってくれない。重役に会って頼むが承知しない。伊之助は必死だった。

尊王の大義を長いこと貫いてきた我が藩の真価が問われる時が来たのですぞ。幕府の誤った外交で日本という国が亡びてよいのですか。岩国はわかってくれましたぞ」

伊之助は重役たちに必死で訴えた

 そして伊之助は強く言い放った。

「私は本藩の命を奉じて来たのだから、長府公が一息たりとも御命のある間はご面会して命を伝えなければならない」

日頃冷静な伊之助が激しく燃えていた。

 到頭、長府公は病床で会ったが返事をしない。

藩の有志を説かねばならないということになって、夜、浜の松の木の下で秘かに会議をすることになった。

「幕府に逆らえば取り潰しにあうぞ」

「いや、昔の幕府ではない。関が原の怨みを返す時が来たのだ」

 

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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