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2015年9月30日 (水)

人生意気に感ず「ペルーの謎の殺人鬼。国際化時代の犯罪。憲法改正」

 

 ◇6人を殺した疑いのペルー人の意識が戻ったと聞きほっとした。事件がこのまま闇に葬られることを恐れたからだ。謎に包まれたこの事件は国際化時代の犯罪と地域の安全を考える上で重大な問題点を投げかけている。 

 環境が人をつくる面を否定できない。外国人を悪者視することは出来ないが、倫理観、価値観が大きく異なる人が多くなれば国内の犯罪現象に変化が生じるのは不可避である。私は、現職の時、外国人犯罪をしばしば取り上げた。

 

 ナカダ容疑者は、6人を、抵抗する間もなく襲い殺し、その後に室内で飲食した可能性もあるという。壁には血で書かれた意味不明な文字。10人兄弟で、兄の一人は史上最悪の殺人犯で服役中とか。容疑者の人間像を知ることが求められている。埼玉県警はペルーに捜査員を派遣することを検討と言われる。

 

◇埼玉県警は事前にこのペルー人に接していた。不審者情報が住民に届いていれば防げたかも知れない。警察とすれば、確かな証拠がなく、人権侵害となっては、という懸念があったのであろう。それに対しては、知恵を出して、情報の流し方を工夫すべきだと言いたい。毎日、警察から呆れるような不審者情報が入る。「男が少女に声をかけた」というのまである。うっかり女の子に声をかけられない社会になっている。安全を守るために、真に必要な不審者情報の流し方につき知恵を絞って欲しいものだ。

 

◇安倍首相は来年の参院選の公約に憲法改正を掲げることを明言した。国民は、今から憲法を勉強して備えるべきである。さもなければ反対するについても地に足がついたものにならない。

 

 重要なことは、現憲法を理解し、その上で、どこをどのように改めるかを知ることだ。一つの参考資料は自民党の改正法案。9条は、当然のことながら争点になる。変えようとしている点は、2項を「自衛権の発動を妨げるものでない」とし、9条の2を新設し、国防軍を保持すると定めていること。

 

 もう一つ重大なのは次の現憲法97条を削除することだ。「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪え現在及び将来の国民に対し侵すことの出来ない永久の権利として信託されたものである」私はこの規定の削除に反対だ。(読者に感謝)

 

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2015年9月29日 (火)

人生意気に感ず「オバマと習近平。新国立競技のミス。文科相の辞任。医は仁」

 

 ◇25日、習近平とオバマの協議が行われた。アメリカよ、しっかりしろと言いたい。レッドドラゴンの狂気はとどまるところを知らない。航空機300機購入という手土産に目を奪われ矛先を鈍らせるようでは、もはや偉大な国として信用することは出来ない。世界のもの笑いになるだろう。南シナ海の埋め立ては着々と進んでいる。一方的に防空識別圏を設け、近づく日米の情報収集に異常接近の挑発を繰り返している。両首相の握手で、これらが既成事実として定着すれば中国の思うつぼである。 

 私は、アメリカに於ける史上初の黒人大統領に期待していた。かつては奴隷として扱われた黒人。その子孫が世界の権力の頂点に立った。これは人類の進歩の象徴である。オバマが世界から称賛を受ける業績を挙げることの意義は測り知れない。人権を抑圧し、少数民族を圧迫し、世界に覇権を広げようとして暴走する中国に毅然とした対応を示すことがオバマの世界史的役割だと信じる。

 

◇2020年の東京五輪は大丈夫か。新国立競技場の総工費膨脹にからむゴタゴタは、東京五輪のイメージを傷つけた。責任者の下村文科相が閣僚辞任を首相に申し入れた。

 

 総工費は当初1300億円の想定だったが、2651億円に膨脹した。国民の税金である。多くの国民は不明朗さを感じ批判が激しくなった。当然である。安倍首相の決断で白紙撤回となり、この問題を調査する第三者委員会が下村文科相の責任を指摘した。

 

◇「東京五輪にネガティブなイメージがついてしまった」、「7月の白紙撤回の時、辞任すべきだった、第三者委により指摘されて辞任とは日本人全体のモラルの低下につながる」等、批判の声は厳しい。

 

 私は「日本人のモラルの低下につながる」という指摘に同感である。オリンピックはスポーツの祭典である。平和、フェアプレイ、正義、そういった精神の高揚を目指すシンボルではないか。スポーツは教育の柱である。その意味でオリンピックは教育の祭典でもある。この事件は子ども、若者の夢を傷つける出来事と言っても過言ではない。国際サッカーも疑惑まみれだ。今回の不祥事をスポーツ界は乗りこえて欲しい。サムライ日本が試練の時を迎えている。

 

◇同じ医師の手術の死亡例は計30。遺族等は執刀医の説明を求めている。「医は仁」の筈。重粒子線治療の権威まで傷ついて見える。(読者に感謝)

 

 

 

 

 

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2015年9月28日 (月)

人生意気に感ず「ふるさと塾は憲法で燃えた。9条の行方。次の塾は」

 

 ◇26日の「ふるさと塾」の「憲法」を参加者は私語もなく熱心に聴いてくれた。一時間半、いつもと違う点は、映像に絵や写真でなく文字を使ったことだ。明治憲法との比較、ポツダム宣言受諾の意味、「押しつけ」の事実、改正の必要性、どのように改正するか、自民党の改正草案等に及んだ。そして、安倍首相は、来年の参院選では、憲法改正を公約に掲げることを明言している、反対するにしても、判断の規準をもっていなければ、根なし草の騒ぎになると話した。 

 憲法を恐らくよく知らないと思われる若者も熱心に聴いていた。来年は18歳から選挙権が与えられる。学校で如何に憲法を教えるかも一層重要な意味を持つ。

 

◇新憲法の公布は昭和21年11月3日だが、この年の1月1日、天皇の「人間宣言」が出されたことにも触れた。明治憲法下、「天皇は神聖にして侵すべからず」、「神」だったのだ。昭和21年の1月と言えば、まだ明治憲法が存在していた。しかし、ポツダム宣言受諾により、天皇主権の国体は否定されたと説明した。この関連で、この年5月の食糧メーデーに於けるプラカード事件も紹介した。ある共産党員が掲げたプラカードには次のように書かれていた。「ヒロヒト曰く、国体はゴジされたぞ、朕はたらふく食っているぞ、ナンジ人民飢えて死ね、ギョメイギョジ」。これが不敬罪にあたるとされ起訴された事件である。

 

◇憲法改正で一番問題になるのはいうまでもなく、9条である。改正草案でも「戦争の放棄」は明記される。しかし、「自衛権」の文言が書かれること、9条の2が新設され、そこでは「国防軍」が規定されることに触れた。

 

 ここで活発な質問が出た。「自衛権の中には集団的自衛権は含まれますか」、「9条がそのように変更されると、徴兵制になりますか」等々。

 

◇「ふるさと未来塾」は歴史を語ることが本来の目的であった。その中で、十年以上前に「楫取素彦」を取り上げたのである。歴史を学ぶ目的の一つは現代を理解することである。だから、歴史認識に基づいて現代の問題を語ることはこの塾の自然の流れとなる。10月のふるさと塾は10月31日(土)。憲法の続きと、この憲法の歴史的背景を語りたい。ルソーやロックの理論、アメリカの独立宣言、フランス革命の人権宣言に遡る壮大な人類の物語である。(読者に感謝)

 

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2015年9月27日 (日)

小説「楫取素彦物語」第47回

さすがに幕府は重大さに気付き、為す術が分からず、異例の措置に踏み切った。諸藩に意見を求めたのだ。それでも事態を開く道が分からず、朝廷にお伺いを立てた。朝廷の威を利用せんとした姑息さが見てとれる。孝明天皇は断固反対の御意志を示された。井伊大老はこの勅命に逆らったのだ。このように明確に朝廷を無視した例は日本の歴史にない。天皇の顔に泥をたたき突けたのだ

「そうです。我が毛利として、井伊を許せない。切るべきです」

高杉晋作が叫んだ。

私はこれまで公武合体を進めてきた。朝廷と幕府が手を握り力を合わせて国難に当たらねばならぬと信じたからだ。

 しかし、考えよ諸君、この違勅の断行によって朝廷と幕府が手を結ぶ土台は吹き飛んだ。

もはや公武合体を進める余地はない。このままでは、日本はうちから崩れてしまう。今、私たちの選ぶ道は何か。今の幕府になど任せられぬ。倒幕あるのみ」

 松陰の熱弁は教室の空気を圧していた。そして若者たちの熱気一つとなって、そこから何かが生まれようとしていた。渦巻くエネルギーこそ、これからの日本を衝き動かす力であった。

 安政五年という年は西暦では一八五八年、日本にとっても長州にとっても逆巻く狂涛が襲いかかる年であった。この年六月大老井伊直弼は通商条約に調印、国論は沸騰した。安政元年に黒船に乗り込んだ松陰は条約問題が渦まく中で、依然、注目の人であった。

 その影響もあったであろう、松下村塾の門を叩く若者は増え、塾は最盛期を迎えていた。天下は騒然とし、松下村塾もその波に洗われていたのだ。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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2015年9月26日 (土)

小説「楫取素彦物語」第46回

「ことは我が国の秩序の根本に関わる。武家が政権をとった鎌倉以来、朝廷を軽んじてきたが、それでも朝廷を上に立てる礼は執り続けた。今回の暴挙を諸君はどう思うか」

「幕府打つべし。このことで長州が何もしないなら関ケ原以来堅持し続けた長州の志は偽物だったのかということになる。長州こそ腰抜けだと天下の笑いものになるでしょう」

 高杉晋作が身を乗り出して叫んだ。

高杉の言葉を受け継ぐように久坂玄瑞が言った。

「今こそ、長州が動く時、長州は天皇に願出て倒幕の勅命を仰ぎ諸藩と行動を共にすべきです。この役割を担えるのは我が藩以外にない」

「今こそ毛利の本分を発揮すべきだ

「そのとおりだ」

教室のあちらこちらから声が上がった。

それを受けて松陰は語り出した。

「問題を整理しよう。私が黒船に乗り込んだ時の条約は和親条約であった。米国とひとまず、握手して時を稼ぐのは止むを得ないとも思った。今度のは条約の中味が違う。通商を開くとなれば巨人と幼児の商いになる。工業力によって大量生産を行う国と農業しかない国が商いをすればどうなるか

「対等の商いなどできません。赤子のように手をひねられてしまいます」

誰かが叫んだ。

「その通りです。庶民の生活は滅茶苦茶になるのは火を見るより明らかだ。一揆が多発し暴動が起きるだろう。ことは経済の混乱だけではない。日本人の心の問題がより重大だ。けの分からぬ異文化が押し寄せ、我が国の古来の伝統や道義などが吹き飛ぶだろう。日本の文化が揺らぐことは日本人の心が失われることであり、日本の国家が流されることなのだ」

「先生、日本人の心が失われる、日本が流される、なるほど、その考えに賛成です」

元気のよい声が上がった。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

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2015年9月25日 (金)

人生意気に感ず「塩川正十郎と小泉純一郎。国会の嵐は何。中国の狂気。習近平とオバマ」

 

◇塩川正十郎氏が93歳で逝き小泉純一郎元首相が弔辞を読んだ。直接言葉に現さなくても心が伝わる仲だった。財務相の時、野党からある厳しい事実を追及された。小泉さんはこれは尾を引くことになると恐れた。塩川さんは「忘れました」と答え、野党席からも笑いが起き、この問題は何となく消えてしまった。塩川さんの誠実な人柄による成果だと元首相。弔辞の心が伝わってきた。目頭を押さえる場面も。激情を抑えたよい弔辞だった。私も多くの弔辞を読んできた。その中には、万感をこめて最後に語りかける場面というものがいくつかあった。

 

◇国会の嵐が去った。委員長を囲む乱闘、国会を囲むデモ。あれは何だったのか。国民は案外冷静に事態を見詰めていたのではないか。

 

 今、日米同盟に突きつけられているのが中国空軍の狂気である。マッハの速度で自衛隊機に数十mの距離まで近づいて挑発する中国軍戦闘機の行動は常態化し、それは中国の国家意思だとアメリカは分析していると言われる。

 

 中国は有史以来の国力で外に向けて踏み出そうとしている。目指すは太平洋であり、目の前に立ちはだかるのは日本であり、日米同盟なのだ。時あたかも、アメリカは相対的に国力が落ち、世界の警察の役割をやめようとしている。中国にとっては好機である。

 

 中国は内に大きな危機を抱える。それは、一党独裁の危機である。習近平は国民の目を外に向かわせようとしていると思われる。このような状況で習主席はアメリカに国賓として迎えられ、航空機300機を購入すると発表した。中国は強かである。空前のプレゼントをもらって、オバマは強い姿勢で言うべきことを言えるのか。

 

◇日本は、最大の危機にある。「内憂外患」の渦中にある。平和国家として毅然とした姿を貫くことで、危機を好機に転換できる。東南アジアの国々は、中国の脅威を意識しつつ、日本に大きな期待を寄せる。日本が途を誤らないためには歴史を正しく見詰める必要がある。かつての日本の行動に似た一面を現在の中国の行動に見る思いがする。

 

◇25日、習主席とオバマ大統領はホワイトハウスで会談する。中国軍機と米軍機が空中で遭遇した際の対応でも当然話し合われるだろう。中国軍機は米軍機にも最接近している。戦争の危険は「一発の銃砲」の比ではない。(読者に感謝)

 

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2015年9月24日 (木)

人生意気に感ず「安保法案の成立。今月のふるさと塾は憲法。スカイツリーと日本の技術」

 

◇安保関連法案が参議院で可決された。辛うじて参院が存在意義を果たしたということか。参院で議決出来ないときは衆院の再議決で法案は成立する可能性があったからだ。その時は参院不要論が頭をもたげたことであろう。

 

 私は、憲法擁護で、安保法案は賛成の立場なので、ほっとした。法案成立により戦争抑止力が大きく前進したものと思う。国会デモが大きく報じられるので、国論が圧倒的に反対しているように見えるが、賛成は案外多いのではないか。審議を尽くせば賛成できるという人は更に多いに違いない。

 

 政権が目まぐるしく変わる状況では不可能なことであった。安倍の安定政権下でのみ可能であった。年が経つにつれ国民の理解は進むものと思う。民主党の支持率が急に伸びるということはないだろう。

 

◇今月の「ふるさと塾」は9月26日、題は「日本国憲法」。明治憲法との比較、日本国憲法制定の経緯、その基本的内容などを話す。

 

 「経緯」では、GHQの強い指導、いわゆる押し付けられたといわれる点、押し付けられた内容は素早しいもので、定着し、成長し、世界から高く評価される存在になったこと、改正には限界があって、その基本的な点は変えることが出来ないこと、ただし、9条は現実と大きく離れていること。それを承知の上で残すか、改正するかが問題であること等。このような点を問題提起し議論したい。憲法論の中で、今回の安保関連法案が議論されるだろう。新規の参加者も歓迎である。

 

◇22日、息子の周平と、かねてより約束していた東京スカイツリーへ行った。予約していたので入れたと思える混雑振り。展望台へ登って改めてこの構造がどえらいものと分かった。

 

 天気は最近めずらしい快晴。眼下には首都の建物群がすき間なく彼方まで広がる。私は、即座に直下型巨大地震の来襲を思った。それを十分に計算に入れて作られた634mの姿である。巨人は来るなら来てみろと胸を張っているかの如く感じられた。日本の技術を世界に示すシンボルである。巨大地震に破れるようなことがあれば、日本の技術の全てが信用を失う。眼下の世界を見ながら挑戦を受ける時は刻々と近づいていると思った。

 

◇列島が活動期に入った。日本列島の沈没を防ぐものは、平和憲法とそれを支える日本人の精神。新安保法案は平和憲法を守るもの。(読者に感謝)

 

 

 

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2015年9月23日 (水)

小説「楫取素彦物語」第45回

月性は、このとき、松陰の顔をきっとなって正視して言った。

「何を言われる。そんな弱気ではない。今は時を稼いで国力を養うとき幕府を倒すために内乱を起こすなら国力はさらに、小さくなってしまう。敵を知り己を知らば百戦危うからず、この孫子の兵法が活かされるべきです」

 二人の意見は並行線を辿ったが、月性の天皇政治の正統性に基づく理論は松陰に大きな影響を与えた。松陰は単なる学者ではなかった。兵学者であった。兵学者は現実を踏まえて行動する。そこに理論と現実の狭間で悩む松陰の姿があった。

 松下村塾は、叔父玉木文之進が、この名をもって自宅の一隅ではじめたのがおこりである。この塾は自然消滅となり、その後変遷を経て松陰が幽室蟄居の状況で始めた塾が新たな松下村塾の原点となる。安政四年頃より塾は公然と行われるようになる。次第に塾は隆盛となり教室を増築するまでになった。

 安政五年のある日、塾に波乱が起きた。松陰の前に高杉晋作や久坂玄瑞が座り、末席のあたりには伊藤利助(博文)もいた。

「まさかと思っていたが、幕府は勅命に逆らって日米通商条約に調印した。ことは誠に重大である。天皇に伺いを立て、天皇は調印反対の明確な御意志を示された。それに逆らって大老井伊直弼は調印してしまった」

 松陰は塾生たちをはっと睨み拳を上げて机を打った。塾生たちの視線は突き刺すように師に注がれた。血気の若者たちはいつもと違う師の形相に驚き固唾を呑んで師の次の言葉を待った。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

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2015年9月22日 (火)

小説「楫取素彦物語」第44回

学問の意義も突き詰めていくと同じところに行く。松陰殿の獄中教室のことを聞いてそう思いました。学問の役割は、つまるところ、生きる力を養うことです。これは時代が変わっても変わらない。戦乱の時代、人間が生きるか死ぬかで必死だった時代に宗教の真価が問われた。今、改めてその大変化の時代を迎えた。そして、宗教と共に学問の在り方が問われていることだと思います」

、お寿は熱心な信者だからな、あれを支える背骨となってる。母の影響だ。私の心の奥にもはいってる。私はお寿たちと違って学問の道に入ったから、心の表面は学問で埋まってるが、その下には多分に共通なものが根を張っていて、自分では気付かぬながら影響を受けているに違いない。伊之助殿とまた一つ縁の糸がつながったと考えると感慨深い

 やがて松陰が獄から出る時が来た。

 

 

 松下村塾

 

 

 安政三年、松陰は野山獄から出された。杉の実家に帰り、幽室蟄居となる。出獄後奇妙な人物が密かに松陰を訪ねた。真宗の僧月性である。激しい倒幕論者で、野山獄にいた時松陰はこの僧から手紙をもらったことがあった。

 怪僧ともいうべき風貌の男は先ず言った。

「長い間御苦労でしたな。獄というものは今の世で別天地ではないか。刺客に襲われないし書が読める、激しい世の波の外にあってじっくり思いを巡らすことが出来る。松陰殿はいかに過ごしたか、そして何を得たかお聞かせ願いたいものです」

「いかにも、あなたの言う通り牢内は別世界で同囚の人たちとの生活はまたとない勉強になりました」

「あなたの下獄の原因は黒船。幕府の弱腰がはっきりしました。もはや幕府を倒すより他はあるまい。黒船に乗り込んだあなたの勇気には敬服する。その体験によって、あなたが倒幕論になったと僧は期待したのだが」

「返書に述べた通り、私は公武合体論です。鋼鉄の軍艦に触れて外国の力に肝を潰しました。そして改めて思ったことは、今、国内が分して争ったなら敵の思う壺。天朝を上に載きその下で幕府が諸藩と力を合わせることが最良の策と思います」

「いや、今回の事件で、幕府の無能、無策は余りにはっきりした。これが前例となって次々に他の国にも膝を屈することになろう。その先に待つのは、外国の属国になった哀れな日本の姿ではないか。あなたは指をくわえてそれを待つというのか」

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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2015年9月21日 (月)

小説「楫取素彦物語」第43回

「ところで伊之助殿、実験による更なる発見だが、獄というもの、人を殺すことが目的か生かすことが目的か、あなたはどう思われますか」

「まず、悪事に対する責任、懲罰であろう」

「その通りだが、それに尽きるとすれば、仁政徳治を旨とすべき政治の本道に添わない。新しい世は罪人にも光を当てるものでなければなるまい

「罪人にも光。それは罪人も同じ人間という考えで、当然のことです」

鎖国の闇から抜け出して世界に胸を張る日本は、このことにも力を入れなければならないはず。それこそ人間を大切にする原点ともいうべきことです。あなたと私は、学問に生きる身。新しい世を目指して我らの学問の意味を今、深く考えねばならぬと思う」

このように信念を語る松陰の言葉に力がこもっていた。

「いや、その通りだと思う。世の中が大変化する時、学問は、そこで活かすものでなければならぬ。学問も発展し進化しなければならぬ。松陰殿の実験の意味と深さがよく分かりましたぞ。妻が日頃、申していることが、獄中の人々のことと通じていること今気付きました」

「ほお、お寿が何を申しておるのか」

松陰がいぶかしそうな視線を向けた。

「浄土真宗の教えです。例の悪人なおもて往生す、ということです。罪業をかかえ煩悩に悩む衆庶こそ救われるべきという教えです。

人間の根本、人の心の深奥を見詰めた教えだと思う。最近は妻の影響で私も関心を深めております

松陰は、このとき白い歯を見せてにっこり笑った。松陰は真宗を説く寿の姿を思い浮かべていたのだ。

 

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

 

 

 

 

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2015年9月20日 (日)

小説「楫取素彦物語」第42回

この時、一角から声が上がった。

「そのとおりだ」

そこで私は、孟子の至誠の言葉は来るべき新時代にこそ重視されるべきだと確信を抱きました。至誠にして動かざるは未だこれあらざるなり。これは、人間の性は本来善であるという孟子の教えを端的に表現した言葉です。私はこの言葉をこれまで、自分を支える信念としてきた。そして、新しい時代がどんな時代であろうとも、この言葉を大切にしたいと思う」

 松陰が一気にここまで話すと一斉に拍手が湧いた。その時、後ろの物陰からつと立ち上がり一礼して去っていく姿があった。獄吏が囚人に対して師の礼を執るという信じ難い事態が生じていた。

 ある日、伊之助が面会に来た。

「獄中の教室が盛んである由、前代未聞のことです。獄中の囚人を教えて変えるとは大変なる実験。世の中を変える実験ですね。これによれば、国中に教室を興すことはたやすいに違いない。国をつくる基はやはり人づくりですね」

そうです。江戸伝馬町の獄、ここ野山の獄で私はそのことを確信しました。獄という異常の場でも、人はまともな心を蔵していることを知りました。昨日は、孟子の性善説を取り上げ、至誠にして動かざるは未だあらざるなりを論じました

「ほう、孟子の性善説をやりましたか。牢内の話としては最適ですね」

伊之助殿はいま実験言われたがその通りです。人間は、極限の場で真の姿を示す。獄舎で、自ら罪人の身で孟子を説くなど思いもよらなかったこと。そして、学び論じることで人は確実にわってい。これが、実験の成果というわけだ。獄舎は正に天が与えた教室です」

「実に愉快ですな。私は明倫館にあってここの学問は真に役立っているか迷うことがあります。天下の明倫館と獄中の教室、いずれが真の学問所なるか、は、は、は」

 伊之助が笑い、松陰も思わず相好を崩した。

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2015年9月19日 (土)

小説「楫取素彦物語」第41回

「良い点にお気付きです。私は黒船を見て、獄に下り、考える機会を得た。獄中で皆さんと学び合う場をもったのは天の恵みだと思う。実は、今思い出す場面がる。黒船に近づくため投夷書なるものを作り、アメリカ兵に手渡さそうとして下田の浜を歩いていた時のことです。二人の米兵に出会いました

へえー、という声が聞えた。人々の目に好奇心がありありと浮かんでいた。

言葉が通じません。チンプンカンプンやり合っているうちに何となく相通ずる空気が生まれた。相手の目に好意を認めて私は思わず、ありがとうという言葉を発した。相手がサンキューというのが同時った

「面白い話しだな」

誰かが叫んだ。

米兵はありがとうはサンキューのことだと心のどこかにあったらしく、それがつながったとみえ、アリガトウ・サンキューネとしきりに喜び、二人は握手したのです。心が通じる、感謝の気持ちは共通していると感じた瞬間だった。私が今思い出すことは、孟子の性善説は時代を超え、国境を超えて生きているということです。しかし・・」

 松陰はここで話すのを止めて目を閉じてしばし思案している様子。人々は、松陰が口を開くのを待った。

「しかし、機械文明の力が精神文明を圧倒することが心配です。あまりに便利な機械の力、あまりに強力な文明の利器に心の役割が小さくなるだろう。人間は機械に頼る余り、考えたり悩んだりすることが少なくなるだろう。私は行き着くところ、機械万能となり心が不毛の時代の到来を恐れるのです。だから孟子の教え、人の善意を信じることはますます重要になる。いや、そのようにしなくてはならないのだ。機械重視、心より物の偉力を重視することは人間を亡ぼす道だといましめるべきだ

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

 

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2015年9月18日 (金)

人生意気に感ず「チリ巨大地震と国会の乱。3つの事態に切れ目なく。戦う覚悟」

 

◇昨日は大変騒がしい一日だった。地球の反対側の巨大地震と国会の騒動がまるで連動しているかのようであった。安保関連法案は審議に入る入口のところでゴタゴタ。せめぎあいの光景は猿芝居のようだという人がいた。法案の可決は確実で阻止出来ないことは分かっていた筈だからだとその人は言う。恐らく国民にピーアールして得点を稼ぐという意図ではないか。だとすれば国民を欺くための演技でもある。私は憲法擁護、法案賛成。法案成立の行方を真剣に見ているのは中国や北朝鮮だろう。中国の態度は法案整理を見越して変化していることが伝えられている。 

◇チリで巨大地震。マグニチュード8・3、最大5m近い津波が発生。広大な太平洋を日本に向けて波は走っている。素朴な疑問は、現在の日本の活性化している地震と全く無関係かということ。今、18日の深夜、東北や北海道では、津波に対して備える人々の動きが伝えられる。船を引き上げ、土のうを積み、避難所を開設する等。過去にはチリ地震による津波で日本は甚大な被害を受けている。

 

 午前3時津波注意報が出た。最初の到達は北海道、各地の津波の高さを1mと予報している。全国の津波の高さは、この後、変化するのだろう。石巻では午前6時過ぎ満潮と重なると訴えている。東北の人は「3・11」を思い出して不安に駆られているに違いない。

 

◇平時から有事まで「あらゆる事態に切れ目ない備え」で国民を守る。それが①「存立危機事態」、②「重要影響事態」、③「グレーゾーン事態」。①は密接な他国が攻撃されたことで日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由が根底から覆される明白な危険がある事態。考えられるのは朝鮮有事のときの日本人救出など。②は①の一歩手前。放置すれば日本の平和に重要な影響を与える事態。後方支援を行う。範囲は、中東、インド洋、南シナ海など。③は、武装集団による離島上陸など警察や海上保安庁では対処が難しい事態。今回は法律は設けず運用の見直しで対処する。

 

◇憲法は守らねばならない。戦争は絶対嫌だ。しかし、国と国民の命と安全を守るためには戦わねばならない。私は老骨だがいざという時、命をかける覚悟がある。国内を戦場にしないための備えは必要だ。自衛のため、平和を守るために備えなのだ。9条は無理のある規定だが、平和の保障として、武力拡大の歯止めとして守りたい。(読者に感謝)

 

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2015年9月17日 (木)

人生意気に感ず「中国大使館を訪ねる。ドイツの難民受け入れ。安保闘争の今昔」

 

 ◇昨日の国会は騒然とし、その状況は深夜に至っても続く。その昨日の午後。私は中国大使館にいた。王婉・大使夫人と約1時間、有益な話が出来た。訪問の目的は、日中青少年書道展に大使が出席することの要請である。この趣旨は直ぐに伝わり、その後、話は諸方面に及んだ。安倍総理については、祖父岸信介との関わり、長州という思想的背景にも。中国の事情については、高齢化が進む中で福祉の対策が進んでおらず、日本に学ぶことが多いこと、奥地には経済発展の大きな可能性があること、そして、最近の株価対策にも話は及んだ。株価の動きに政府が介入して世界の批判を受けたが、株価の大きな変動を政府は許さないときっぱり語っていた。私が語る、安保関連法案の行方、国会を囲むデモ、特に昔の岸さんの頃の反安保デモについては、真剣な眼差しで聴いておられた。手土産のかわりに、拙著「望郷の叫び」と「楫取素彦読本」を渡すと、楫取の方は既に読んだと言われた。外に出ると、街頭のテレビは、国会周辺のデモの状況を映していた。 

◇ヨーロッパの難民状況はただ事ではない。何十万人という人が、シリアから脱出してドイツに向かっている。ドイツ国民は概ね歓迎している。ナチスドイツの時代、ヒットラー政権はユダヤ人を迫害し、多くのユダヤ人は海外に逃れた。そういう歴史的背景と現在の難民受け入れは関係あることなのか。ベルリンの壁が崩壊して、1990年東西ドイツは統一された。ドイツはその後、経済的にも大いに発展し、難民を受け入れる余裕と必要性が生まれている。しかし、難民受け入れの基盤は人道主義、人権の尊重である。「ナチス」を乗り越えたドイツの人道主義が、難民受け入れの背景にあると思う。同様な運命を辿った日本は難民に対して厳しい。いずれ、日本国憲法の人道主義が、難民問題で試される時が来るに違いない。人口減少社会の先にある姿は外国人の受け入れである。

 

◇昭和35年(1960)、6月15日、東大生樺美知子がデモの渦中で死んだ。国会を囲むデモは10万人。今日のデモの比ではない。岸首相は目的を達して退陣した。今日、岸に対する歴史的評価は高い。安倍首相の安保政策に対する歴史的評価がどうなるかは分からない。国際情勢は60年安保の時より中国や北朝鮮によって緊迫している。運命の時が刻々と迫っている。(読者に感謝)

 

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2015年9月16日 (水)

人生意気に感ず「折田さん禁錮2年の求刑。警官の不祥事。阿蘇の噴煙。人間塾。」

 

 ◇折田謙一郎さんに禁錮2年の求刑が。政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で、14日、初公判。「間違いありません」と起訴内容を認めた。小渕優子さんの元秘書で事務所長。 

 中之条町長時代は原発の汚染土受け入れなどで見識を示し決断力があった。私は親しくしていただけに残念である。政治家は、政治資金収支報告書の記載を形が整えばいい、帳尻合わせと軽視しがちだが、実は国民の税金をこう使いましたという報告だから重大であり、政治の信頼の基礎をなす。選挙で大勝を続け安定した政治の砦に油断があった。金城鉄壁も蟻の一穴で崩れる。この事件で、多くの政治家は肝を冷やした。判決は10月9日。検察は「計画的な犯行」と厳しい。事件発覚後の折田さんの対応等から、執行猶予となる可能性ありと見るが、世論の関心の高さと事の重大性から予断を許さない。見守りたい。

 

◇県議会が14日から開会。私は所をかえて外野席から議会を見る。開会に先立ち、県警音楽隊が議場で「花燃ゆ」のメーンテーマを演奏した。初めてのこと。県警の志気を高める一助となるのでは。

 

 私は、現職の時、警察の乱れを度々取り上げた。警察学校で、「楫取と松陰」を講演したこともあった。警察は乱れた社会の砦。警察官の使命は誠に重大だが、今、警察に何か変化が感じられる。

 

 警察官の不祥事が跡を絶たない。こともあろうに、若い巡査部長が、不倫の金のため、強盗殺人の容疑で逮捕された。警官よ、お前もか。警察官が威信を失い、軽蔑される時、社会は崩れる。享楽の世を共に流される警察官。侍の魂を取り戻して欲しい。

 

◇阿蘇山の黒く立ち昇る噴煙は、地下の如何なる実態を物語るか。しばらく静かだった日本列島が活動期に入ったと専門家はみる。桜島も勢いづいている。浅間は大丈夫か。地震も異常だ。日本人は皆、今、何かが迫っていると感じている。日本人の心の基盤を支えるものは日本国憲法。今月26日の「ふるさと塾」で私は憲法を語る。

 

◇14日の「人間塾」はうまくいった。ネパール、インドネシアなど多くの留学生が熱心に聴いた。「群馬の歴史と文化」を語る。言葉のみでなく群馬を深く知ってもらうことが目的。生徒を引き付けるためにクイズの形も利用した。月1回の私の特別講義。次は10月19日。(読者に感謝)

 

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2015年9月15日 (火)

人生意気に感ず「小泉さんの原発ゼロ発言の衝撃。日本沈没。天の警告」

 

 ◇9日、小泉元首相は新聞のインタビューに答えて、原発再稼働を厳しく非難した。激しい表現に驚く。「間違っている。日本は直ちに原発ゼロでやっていける」。「安全でコストが安いと言っているが、全部嘘。福島の状況を見ても明らか。原発は安全ではなく、対策を講じようとすれば更に莫大な金がかかる」。原発はCO2を出さないという点については、「CO2より危険な核のゴミを出している。全然クリーンじゃない。原発は環境汚染産業だ」。 

◇12日の東京湾を震源とする大きな地震には肝を冷やした。いよいよかと思った。巨大地震は確実に近づいている。首都直下型だけでなく、南海トラフ型地震も。全国の原発は大丈夫なのかと心配だ。そこで、6月4日、小泉さんが鹿児島で行った講演の重要さを考えた。「原発は一度事故を起こしたら取り返しがつかない。川内原発の再稼働が迫っている地域の皆さんにもっと気づいて欲しい」、「自然エネルギーをどんどん増やしていけばもう原発なんていらない」、「原発ゼロの社会は確実に日本を発展させる。しかも世界が日本を手本にするいい機会だ」、「皆、口に出さないけれど原発はテロに一番弱い。しかし、対策をやり始めたら莫大な金がかかる」

 

 そして、自然災害に関する次の発言には会場から一斉に拍手が起きたという。「この10年間、マグニチュード7前後の地震が5回も起き、その度に原発はストップした、05年の宮城県沖地震、07年の能登半島地震、同じく07年の新潟中越沖地震、09年の駿河湾地震、そして、11年の東日本大地震だ。火山もいつ爆発するか分からない。日本は原発をやってはいけない国だ」

 

◇小松左京がかつて「日本沈没」を書いた。あの状況が迫っているかのようだ。5月29日、口永良部島で突如爆発的噴火が起き、翌30日連動するように小笠原諸島で巨大地震が発生し、これは観測史上初めて全国47都道府県を震度1以上で揺さぶった。地震学者は言う。「東日本大震災が日本列島の下にある基盤岩を大きく動かしたことが火山や地震の活性化に関係している」「地震を鍋でお湯を沸かすことに例えれば、今は沸騰寸前」

 

◇鬼怒川決壊により押し寄せる泥の海は「3・11」の津波を思わせる。天は、「3・11」を生かせない下界に警告を発しているようだ。(読者に感謝)

 

 

 

 

 

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2015年9月14日 (月)

人生意気に感ず「敬老会招待のショック。正論懇話会で。アレクサンドル2世の仲裁」

 

 ◇昨日、地元鳥取町の敬老会に出た。昨年と違う点は来賓ではないことだ。何と招待者なのだ。実は、突然敬老会の案内を受け取った時はショックだった。予期していた、というより考えないことにしていたという方が正確かもしれない。私には未だ老いの自覚がないからだ。 

 昨日も、午前2時に起き、原稿を何枚も書き、書を読み、文献を調べた。いつものパターンである。7時から公園の草取りが予定されていたので、いつもより早い時間、6時にスタートし走った。走ることを休むことはない。リズムを崩すと心に響く。

 

 午前10時が近づく。私は爽やかな気分で、力まずに参加しようと決めた。私なりに置かれた状況を受け入れることにしたのだ。席に着くと回りの人々は、新しい仲間を温かく迎えてくれた。これも私の人生なのだと改めて思った。隣の人が言った。「先生、少しはゆっくり出来ますか」と。「はい、多少は」と答えたがなかなか忙しい。余興が始まる前にそっと外に出た。事務所で娘が待っている。翌日、アジアの留学生に「人間塾」の講演をする。映像を使うので資料作りである。日が明けて、今日の10時50分、会場はロイヤルホテルである。

 

◇11日、午後1時より、産経・「正論懇話会」で、特別講演を行った。演題は「近代群馬を築いた県令楫取素彦」楫取のルーツである幕末から明治初頭の時代背景を初めに話した。その中に、群馬の「廃娼」に影響を与えたと思われる奴隷船マリア・ルーズ号事件、太政官布告295号、ロシア皇帝アレクサンドル2世の仲裁裁判などが登場する。マリア・ルーズ号はペルー船籍の船。日本はペルーから公娼こそ女の奴隷制度と指摘され、太政官布告で娼妓解放を宣言した。交渉は紛糾し露帝に仲裁を依頼。かつて農奴を解放したアレクサンドル2世は、日本を勝たせる裁定を下した。明治8年のこと。楫取が群馬県令として登場したのは明治9年であり、県議会が廃娼の建議を可決したのは明治15年3月19日。県令楫取はこの年明治15年4月14日廃娼を布達した。正論懇話会は年配者が多かったようだが、若い女性で熱心に耳を傾ける姿がめについた。

 

◇県は常総市へ水を提供した。480ミリ、2万本。誰かが泥害と言った。見渡す限りの泥の海。水がないと生きられぬ。命の水だ。(読者に感謝)

 

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2015年9月13日 (日)

小説「楫取素彦物語」第40回

この講義の初めに松陰は孟子について話した。

「中国古代、戦国時代の思想家です。人の心は本来、道義性をもっている。修養によって仁義礼知の四つの徳を成就する可能性を有している。孟子は、この考えに基づいた仁義による政治を強調したのです。人の善性を信じること、そして、それに基づく政治の重要さは二千年を経た今も変わることなく受け継がれている

松陰は一同の顔を見た。難しい話に同囚の人が真剣に耳を傾けている。信じ難い光景であった。

私は、人は本来良い徳性をもつという孟子の教えを、今、この牢獄で確かめた思いであります。罪人とされた皆さんが獄中で真剣に学ぶ姿こそ性善説を示すものです。私は江戸の伝馬町の獄中でも同じ体験をしました。この獄中で新しい時代の学問は如何なるものかと質問がありましたが、孟子の教えこそ、日本人の心をつくる学問だと信じます」

 このとき一人の男が手を挙げて質問した。

「先生、孟子は中国の人、その教えというものが毛唐にも通用するものでしょうか」

「二千年以上の歴史の風雪に耐えて生きた孟子の教えが新たな最大の危機に晒された。東洋の哲学が西洋の機械文明に通じるかという問題です。しかし、私は望みを持っております。人間の心というものは洋の東西を問わず本質に違いはないと思うのです。私は長崎の体験、そして、黒船に乗り込んだいきさつからもそういう思いを深めまし

が」

と誰かが松陰の言葉を遮って言った。

「大海原を越えてくる恐るべき工業力の前で人間の性は本来善などといっても蟷螂の斧ではあるまいか」

すると

「いや、その工業力を動かすのは人の心なのだ

別の者が反論した。

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

 

 

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2015年9月12日 (土)

小説「楫取素彦物語」第39回

◇まるで戦場。「3・11」のようだ。昨夜は、深夜から一日中、一つの壮大なドラマを見る思いだった。午前1時テレビをつけると、「栃木県特別警報」という大きな字幕が目に飛び込む。そして、気象庁が記者会見を始めた。「今まで経験したことのない異常事態と言ってもよい。重大な危険が迫っています。大災害が既に発生していてもおかしくない状態です。出来るだけ早く避難して下さい」

 

 その後の経過は会見の警告の通りとなった。鬼怒川の堤防が決壊した。水の力は凄まじい。24時間に500ミリを超える雨、立錐の余地なく50センチの高さの水。これが低いところ、川に集まるのだからたまらない。自然の威力の前では人間の力など何と非力なことか。逆巻く濁流の中、犬を抱いて屋根にしがみつく人がいる。柴犬らしい。我が家のさん太に似ている。ぬれた屋根の斜面はすべるに違いない。犬をしっかり抱いて救助を待つ。生きた心地はないだろう。上空のヘリから自衛隊員が下りてきた。犬はじっと動かない。深刻な事態を理解しているかのようだ。犬と人間がヘリに入るのを見て思わずほっとした、

 

 災害史に残るに違いないこの大洪水。これは決して私たちと無縁のことではない。温暖化で気象の秩序が狂い出した。日本中どこでも異常が日常になりつつある。群馬では大丈夫と安全神話に胡坐をかいていると大変なことになる。今回の大洪水は、このことを私たちに警告している。

 

◇八ツ場ダムが建設に向けて大きく動き出した。県議現職の時、私は八ツ場ダム推進議連の会長だった。ダムの目的は治水と利水である。治水とは洪水対策である。ダム反対派は治水の効果はないと主張した。昭和22年のキャスリン台風は最悪の被害をもたらしたが、この時吾妻地方にはそれほど降らなかった。もし、この地域に今回のような雨が降ったなら、下流都県は悪夢の如き惨状に見舞われたに違いない。大災害の時代に入ったのである。最大の防災力は地域力だ。自助と共助を支えるものが地域の連帯なのである。

 

◇今日、産経新聞の「正論懇話会」で特別講演を行う。題は初代県令楫取素彦。現在、産経の群馬版に週3回、小説楫取素彦を書いている。現在84回。面白いと言われ、講演の実現となった。

 

◇八ツ場訴訟の県側勝訴が確定。住民側は、治水利水の面で効果なく違法と主張。今回の大水害を反対側はどう受け止めるか。(読者に感謝)

 

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2015年9月11日 (金)

人生意気に感ず「鬼怒川怒る。映画のよう。八ツ場ダムの効果。正論懇話会で」

 

 ◇まるで戦場。「3・11」のようだ。昨夜は、深夜から一日中、一つの壮大なドラマを見る思いだった。午前1時テレビをつけると、「栃木県特別警報」という大きな字幕が目に飛び込む。そして、気象庁が記者会見を始めた。「今まで経験したことのない異常事態と言ってもよい。重大な危険が迫っています。大災害が既に発生していてもおかしくない状態です。出来るだけ早く避難して下さい」 

 その後の経過は会見の警告の通りとなった。鬼怒川の堤防が決壊した。水の力は凄まじい。24時間に500ミリを超える雨、立錐の余地なく50センチの高さの水。これが低いところ、川に集まるのだからたまらない。自然の威力の前では人間の力など何と非力なことか。逆巻く濁流の中、犬を抱いて屋根にしがみつく人がいる。柴犬らしい。我が家のさん太に似ている。ぬれた屋根の斜面はすべるに違いない。犬をしっかり抱いて救助を待つ。生きた心地はないだろう。上空のヘリから自衛隊員が下りてきた。犬はじっと動かない。深刻な事態を理解しているかのようだ。犬と人間がヘリに入るのを見て思わずほっとした、

 

 災害史に残るに違いないこの大洪水。これは決して私たちと無縁のことではない。温暖化で気象の秩序が狂い出した。日本中どこでも異常が日常になりつつある。群馬では大丈夫と安全神話に胡坐をかいていると大変なことになる。今回の大洪水は、このことを私たちに警告している。

 

◇八ツ場ダムが建設に向けて大きく動き出した。県議現職の時、私は八ツ場ダム推進議連の会長だった。ダムの目的は治水と利水である。治水とは洪水対策である。ダム反対派は治水の効果はないと主張した。昭和22年のキャスリン台風は最悪の被害をもたらしたが、この時吾妻地方にはそれほど降らなかった。もし、この地域に今回のような雨が降ったなら、下流都県は悪夢の如き惨状に見舞われたに違いない。大災害の時代に入ったのである。最大の防災力は地域力だ。自助と共助を支えるものが地域の連帯なのである。

 

◇今日、産経新聞の「正論懇話会」で特別講演を行う。題は初代県令楫取素彦。現在、産経の群馬版に週3回、小説楫取素彦を書いている。現在84回。面白いと言われ、講演の実現となった。

 

◇八ツ場訴訟の県側勝訴が確定。住民側は、治水利水の面で効果なく違法と主張。今回の大水害を反対側はどう受け止めるか。(読者に感謝)

 

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2015年9月10日 (木)

人生意気に感ず「深夜の特別警報。県会は存在意義を。昭和22年のキャスリンを」

 

 ◇午前1時、テレビをつけると、画面は、栃木の異常事態を報じていた。埋め尽くす夜の濁流は街の大通りの光景なのだ。立ち往生の車がいくつも見られる。気象庁の記者会見が始まった。「特別警報」が出され、会見はその内容を伝えている。栃木県内、鹿沼市や宇都宮市を中心に甚大な災害の危険が迫っている。直ちに避難してください。さもなくば、2階など高い所へ。今までに経験したことのない異常事態です。ざっとこのようなこと。夜のどす黒い水を写す画面から不気味な緊張感が伝わる。 

 避難したお婆ちゃんが68年生きてきたが初めてのことだと語っている。

 

 栃木の夜の街は、近い未来の日本の姿に違いない。前橋の夜は台風一過、誠に静かで伝えられる栃木と対照的だ。この静けさが無気味に感じられる。今、午前3時。栃木の雨はまだ続くと報じている。24時間で450ミリ。1時間の雨量は50ミリを超える。大量の水はどこへゆく。都内へ流れる川は氾濫の危険水位を超え、都内各地にも危険が迫っている。私たちの社会はノアの箱舟を用意する段階に来ているのかもしれない。

 

 大雨による洪水だけではない。巨大地震が確実に迫っている。学者など専門家の認識度は私たち一般人のそれとは違う。パニックを恐れ、又、自然の一呼吸は長いことから、発言を控えているのだ。「群馬は大丈夫」という「安全神話」が依然として支配している。私が「大災害が迫る」と書いたら食ってかかった婆さんがいた。

 

◇県議会が始まる。政治が信用を失っている時だが非常時に動けるのは「組織」である。県議会は存在感を示して欲しい。

 

 私は今、誰もが読める易しく面白い「県議会史」を書いている。キャスリン台風は昭和22年9月15日。この年9月25日に県議会は臨時会を開いた。増田議長、北野知事は、直後の状況を生々しく伝える。議長は「今回のカスリン台風は置県以来かつてない大風水害でその被害は誠に激甚・・・」、そして北野知事は「戦後の復興も未だならず、戦後の疲弊の内よりようやく再起の緒に着いた矢先の甚大な被害は実に悲痛の極み・・・」と訴えている。

 

 私は小学校1年。学校は早く終わり、途中二つの川は濁流が狂ったように流れ、直後に二つの橋は落ちた。栃木の「特別警報」は、キャスリンを想起させる。私たちへの警報でもあるのだ。(読者に感謝)

 

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2015年9月 9日 (水)

人生意気に感ず「司法試験の不正。台風18号の意味するもの。高齢者転落死」

 

 ◇司法試験の中枢に不正があった。正に驚愕。憲法の問題を受験生の女性に教えたのは明治大学の教授。試験問題を作成する試験官だった。司法試験は、裁判官、検事、弁護士などの入口である。最も公正が要求される試験。司法への信頼を傷つける事件である。仮に不正で試験を通った人が将来裁判官になり死刑判決に関わる。このようなことは想像するのも恐ろしい。今でも難関だが、かつては針の穴をくぐる程と言われ、現代の「科挙」と言われたことも。多くの人が人生を棒に振ったのだ。受験生が苦難に耐えたのは厳正さへの信頼だった。今回のようなことがあると昔から不正はあったのかと思ってしまう。 

 憲法の論文試験の問題を教えた。受験生が作った答案は有り得ない程完璧で試験官が不信を抱いたというのだ。報道では、問題の教授は女性に答案論文の書き方まで指導した。

 

 この受験生は受験からはずされ、今後5年間受験資格を失う、教授は刑事告発された。いずれも当然のことだ。憲法を教える学者として正義の感覚はなかったのか。今後、この教授の漏洩の動機が追求されるだろう。せめて、変なことが絡んでいないことを祈る。女性受験者にとっては人生を棒に振る程の衝撃だろう。この事件は例外中の例外なのか。この試験制度の構造的な問題が指摘されることから、可能性としては他にも有り得ることである。

 

◇台風18号が接近し、山崩れ、都市の水びたし、避難する多くの人々。毎度のことであるが、変化の象徴に違いない。取材に応える多くの老人たちが生まれて初めてのことと発言している。専門家は何百年に一度の変化が近づいていると警告する。

 

 サメ、ハチ、ダニなど危険な生物が日本全体に広がっている。平和でのどかな日本の自然が今、危険な生き物に侵されつつある。

 

 今、この文を書いている時も、となりのテレビが台風情報を伝えている。関東、東海でこれから350ミリも降るという。くまなく35センチの高さに雨が降る。それが低い所に集中するのだ。人間は古来低い所に住んでいる。都市はほとんどが低い所にある。大洪水は想定外である。我々の前途にはノアの大洪水が待受けているのか。

 

◇3人の高齢者が転落死。多くの人は殺人と見ている。虐待の極致にゴミ扱いがある。人権感覚の欠如は物質万能の結果。注目したい。(読者に感謝)

 

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2015年9月 8日 (火)

人生意気に感ず「マタハラ。タケシ橋下を切る。安保法案は迫る」

 

◇「マタハラ」を知らない人は多いのではないか。「マタニティハラスメント」のことだ。妊娠を理由に解雇する等不利益な扱いをすること。セクハラとか、パワハラなどこの種のカタカナ用語がよく目につく。

 

 マタハラが重要のなは女性の人権、ひいては子育て環境を守るという点である。男女雇用機会均等法はマタハラを禁じている。厚労省は茨城県の医院の実名を公表した。同県牛久市の牛久皮膚科医院。20代の看護助手は妊娠したが就業を希望していた。院長は「明日から来なくていい。妊婦はいらない」として解雇した。医院は行政の勧告に応じず、ついには塩崎厚労相の名で是正勧告をしても「均等法を守るつもりはない」と応じなかった。同医院は、「院長の体調不良により休診中」との理由で取材に応じないという。院長は相当のへそ曲がりに見えるが実態は分からない。最高裁は昨年、妊婦や出産を理由とした降格は原則として違法であるとの判断を示した。県議会が間もなく始まるようだが、誰かが取り上げるかもしれない。

 

◇大阪維新の橋下市長はピエロか本物か。最近のゴタゴタの行方はどうなるのか。野次馬根性も手伝って興味をもってみているが、タケシが二流の週刊誌で材料にしている。石原慎太郎と組んだことは「こんなのと組むんだ」と評し、「賞味期限切れ」、「落ち目のアイドル」と手厳しい。落ち目のアイドルは最後に生き残るために下半身ネタに頼り、ついにはヘアヌードを出したりAVに出たりすると言っているが、橋下も同じと言いたいのだろう。

 

 私は、人生の壁に突き当たった橋下という人物が、どのように乗り越えるか、それとも自滅して消えるのか見たいと思う。

 

◇安保関連法案が山場を迎えた。ポイントの一つは憲法59条が定める衆院優越のルールである。「衆議院が可決した法律案を参議院が受取った後は60日以内に議決しないときは衆議院は参議院が否決したとみなすことが出来る」そして「否決とみなされた法律案は衆議院で出席議員の三分の二以上で再議決すれば法律となる」。この通り進めば参院の権威が問われる。メンツがないというのだ。60日の期限が迫った。参院は多数決で法案を通すだろう。かつての安保改正の時、岸さんは辞任し、デモの動きは一気に鎮まった。今回はどうか。深刻な国際環境下で歴史の歯車が大きく回る。(読者に感謝)

 

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2015年9月 7日 (月)

人生意気に感ず「朝日支局長の逮捕。東北大の非常事態。文理佐藤学園も」

 

 ◇朝日支局長・現行犯逮捕に驚く。校長、警察署長、裁判官等々の破廉恥罪にはもう驚かない私であるが、朝日の記者の逮捕には驚いた。酒気帯びで追突した。会津若松白虎町の市道で前の車に追突。本社は「関係者にお詫びする。厳正に対処し記者教育に徹底する」とコメントを出した。 

 朝日といえば日本を代表する新聞で、社会の理想や正義を代表していると見られている。今回の酒気帯び事件は、こういう看板に泥をぬる行為だ。しかも、酒気帯び運転は過失犯ではなく故意犯である。支局長という責任ある地位の行為であるだけに、最近の朝日批判を思い出しながら、朝日とは何だと考えてしまう。

 

◇こちらも、なんだと驚く出来事。天下の東北大が「非常事態宣言」を出した。工学部で、学生職員の強姦、窃盗罪で、倫理観の危機を訴えて、工学部長名で宣言を出した。男子学生が女児の下半身を触ったことでの強制わいせつ罪、同じく男子学生の10代女性に対する強姦罪、更には学部職員の窃盗罪と続いた。掲示板に張り出された内容は「倫理観の欠如による人権侵害などの行為が相次いでおり慙愧の念に耐えない」、「大学が築いてきた信頼を大きく裏切る」等。

 

 大学は真理を求める知の砦である。研究の頭上には人類の進歩のためとか、社会への貢献とかの崇高な理念がある筈。これは、強制わいせつや強姦罪といった性犯罪と相容れない。学長は、知の砦がガラガラと崩れる懸念を抱いたのだろう。全国の大学は他山の石としなければならない。

 

◇学園の不祥事は続く。埼玉県の文理佐藤学園長の公私混同問題。学園の経費を私的流用したことが指摘されている。創業者の娘で、学園を私物化したところに問題があるのだろう。海外視察を繰り返し、領収書なしで膨大な支出を行った。学園の修学旅行先で単独行動をとり、カジノで遊んだことも報じられていた。父親の理事長は「わが子の教育が適切でなかった。生徒や保護者に申し訳ない」と語る。娘は都内に入院してしまった。

 

 この種の学園長の不祥事は学園もイメージを大きく傷つけるだけでなく、そこで学ぶ生徒のプライドを踏みにじる。営利企業の創業者一族が会社を私物化するのと訳が違う。全国にはこの種の私学が結構あるのかもしれない。(読者に感謝)

 

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2015年9月 6日 (日)

小説「楫取素彦物語」第38回

吉村は噛み締めるような口調でいった。

「左様です。私は、ここへ来る前、江戸伝馬町の牢獄で過ごした。あそこもここも、閉ざされた狭い世界です。外では目を見張る程の変化があるのに。外が見えないこの空間がここで暮らす人の心をつくる。そうは思わぬか。私の牢獄生活は短いが、身をもって思う。鎖国も同じだと思わぬか」

 その時、河野数馬が口を挟んだ。

「先生の言は極論ではござらぬか。鎖国の中でも人々は、家族の営み、男女のこと、喜びと悲しみを受け止めつつ、その中で生を営み、文化を育てたではないか。この点をどうお考えか」

「いかにもあなたの申すとおり、鎖国の中で日本人は泰平の世をつくり、特色ある文化を育てた。鎖国の日本を牢獄と同列に置くのはこの国が亡びるかどうかの瀬戸際に立たされたと思うゆえの私のたとえなのです

 松陰が数馬に視線を移すと、数馬の頷く顔が見えた。

ここ数年、日本をつつむ世界の動きは驚くばかりです。私は、嘉永三年、長崎平戸に長く居て信じられぬような世界の動きを知った。鎖国の日本は世界から取り残された牢獄のように思われた。長崎の平戸こそ、牢獄から外を見るように作られた天窓であった

天窓という言葉に人々が驚いている。

そして、嘉永六年、黒船が現れた。近くで観察すると、正に、長崎で聞いた外国文明の偉容。私は矢も盾もたまらず、実際の外国を見たい思いに駆られ乗り込んだのです」

「兵法の大家をもって鳴る先生としては愚挙ではなかったのですか」

 今まで身動き一つせず耳を傾けていた富永弥平衛が突然口を挟んだ。

「兵法のことを言われると面目ないが、すでに小手先の兵法は通用せぬものと思っていた。私は敵を知ることこそ執るべき兵法の第一と考えた。孫子が言う、敵を知り己を知らば百戦危うからずです。アメリカへ行く目的は達せられなかったが黒船の艦上に立った時、アメリカに上陸したような思いを抱きました」

「その体験を今後如何に生かすお考えか」

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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2015年9月 5日 (土)

小説「楫取素彦物語」第37回

「秘かに伝えられる先進国の歴史は人間の平等ということに向かっておるそうです。近い将来生まれる新しい日本も、そういう平等の社会に近づくに違いない。私はそう信じてます。身分の差別があっては、国民が心を一つにして外敵に立ち向うかうことが出来ません。こういう点からも、士農工商が一つにならねばならないのです

 

こう話して、松陰が女に目を向けると、女はそれを受けて頷いた。

 

穢多・非人もなくなるでしょう。頭を押さえつけられた人々がその重しをとられた時、心も解放されて国のために力を合わせることが出来る私はそう思います。だから、女の立場も大分違うものになることは間違いない。」

 

 女は、松陰を見詰め、一語も聞き漏らさじという表情で聞き入っていた。

 

 女は、学者として名高い若者が真っ直ぐに自分たち罪人に向き合っている姿に心を打たれたのであった。

 

 松陰の学ぶ姿、時々交わす議論、これらはいつしか同囚の人々の心を畏敬の念に変えていった。松陰の獄中教育の始まりであった。

 

 積極的に学ぶ姿勢を見せた人に、もと寺小屋師匠の吉村善作、俳諧をよくやる教養人河野数馬、書道の師匠だった富永弥兵衛などがいた。

 

「これからの学問は、読み、書き、算盤だけではだめだ。世界の地理や歴史を教えなければならんと思いますが、先生のお考えをお聞かせ願いたい」

 

 吉村善作が尋ねた。

 

「はい、確かに世界のことを知る必要があります。しかし、単なる知識の問題ではありません。日本人の心の問題です。これからは、一つの狭い場所で地べたに張り付いて一生を終る日本人ではありません。開国は日本人の心を開くのです。そういう世を生きる力を育てる、それがこれからの学問でなくてはなりません」

 

 松陰は学問のことになると、背筋を伸ばすように姿勢を正して発言した。

 

「うーむ、開国は心を開くとは大胆なこと。長い鎖国は日本人の心を貝のように閉ざしたと申すか」

 

 

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

 

 

 

 

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2015年9月 4日 (金)

人生意気に感ず「抗日戦勝利の天安門。満州の体験集。不動産王トランプ。熊ヶ谷親方。明治天皇の玄孫逮捕」

 

 ◇天安門広場と長安街。歴史の街の空間を埋め尽くす人と兵器。圧倒されるが、次の瞬間、これは、私たちを破った力と実力を天下に示している光景だと気付き心が重くなる。タイムカプセルで70年以上前の日中戦争の舞台に立ったような暗い気持ちに襲われた。 

 この舞台で、習近平と朴大統領が共同戦線を作って日本に迫るようだ。中国の力の誇示は日米に向けられている。国会に集まって安保関連法案反対を叫んだ人はどう受け止めているのだろうか。

 

 オバマ大統領は、私たちを励ますかのようにメッセージを発した。「日米関係は和解の模範である」と。昨日の敵は今日の友。日米の和解を支えるものは、日本国憲法と日米安保条約である。中国と和解出来ない根本は国家体制の違いにある。

 

◇戦後70年を記念して、満州を生きた人々の体験集を作ることになった。私も、中国残留帰国者協会の顧問として約10枚の原稿を書いた。満州事変、満州国、日中戦争などを私の目で振り返った。

 

◇来年の大統領選に向けて不動産王トランプ氏が圧倒的な勢いを示している。最新の世論調査では先頭を走るトランプ氏が26.5%。その凄さは3位のブッシュ氏が9.5%であることからも分かる。「米国を再び偉大な国に」という姿勢がうけている。不法移民対策として、メキシコ国境に「万里の長城を築く」という公約を掲げている。過激な暴言で熱狂的支持を集めている姿は、どこかヒットラーを想像させる。

 

 専門家の見方では、共和党の指名を受けることは出来ない。しかし、無所属で本選に出馬すれば共和党にとって悪夢のような展開になるだろうという。保守票を奪われ民主党を利するからだ。アメリカの民主主義は面白いが危うさを感じさせる。

 

◇近く大相撲9月場所が始まるのに不祥事が発生した。熊ヶ谷親方が傷害で逮捕された。部屋に属さない使用人の男を金属バットで数十回殴ったという。知らない世界の出来事だがどういう感覚の持ち主なのか。相撲人気が上昇してきたのに、相撲はそんなものかと見られてしまう。国技が泣く。

 

◇明治天皇の玄孫(孫の孫)が大麻所持で逮捕された。日本オリンピック委員会会長の甥。昔ならこういう事件は表に出なかったかも知れない。民主主義の健全さを示す一例か。(読者に感謝)

 

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2015年9月 3日 (木)

人生意気に感ず「エンブレム停止。2人だけの自民議員。抗日戦パレード。山口組」

 

◇エンブレムとは象徴、シンボルマークを意味する。2020年の東京五輪のエンブレムが使用中止となった。ベルギーの劇場ロゴと似ていると指摘されていた。アートディレクターの佐野研二郎がデザインした。オリンピックのシンボルマーク作成といえば国家的事業である。私は佐野氏の「模倣はしていない」という発言を信じるが、慎重さに欠けていたのではないか。同情と同時に残念に思う。

 

 新国立競技場の計画に続くつまづきで、日本の威信を傷つける出来事だ。二度あることは三度あると、ならないことを祈る。二つのことを教訓にして気持ちを引き締めるべきだ。

 

 佐野氏の発言の中に「昼夜を問わず誹謗中傷が続いている」とある。事実とすれば事務所や家族は大変なのだろう。

 

◇質問に答えた自民党議員は二人だけとは。女性弁護士らでつくる市民団体が、安保関連法案への賛否を問うた。衆参の全議員716人にアンケートした。回答したのは、民主31人、共産29人、社民5人で、与党のうち自民2人、公明は0人。自民の二人は法案に賛成し「法案は憲法に違反していない」と答えた。

 

 自民党はなぜ積極的に回答しないのか不思議だ。安倍首相が一貫して法案の必要性を訴えている姿を見て、やはり必要なのかという見方をする国民も少しずつ増えている時だと思う。こういう時に、ただ二人だけが賛成と答えたことは、自民党の国会議員も実は自信がない、賛成していないのではと受け取られる。こういう機会を戦略的に利用すべきではなかったか。

 

◇抗日勝利70年記念の軍事パレードが今日行われる。式典会場は天安門広場。パレードのルートには長安街が。いずれも私は何度も訪れた。不測の事態を防ぐための規制は凄まじい。地下鉄が封鎖され、長安街に面した住宅の一部は自宅を空けホテルに泊まる指示が出され、レストランも場所によって営業停止になることも、などなど徹底した規制ぶりらしい。

 

 私は、朝の長安街を走ったことがある。あそこが壮大な軍事色に一変する。発展する中国の力を世界に誇示する目的であろう。

 

◇平和で民主的な法治国日本で最大の暴力団・山口組の本部邸宅が大々的に報じられる違和感。組織分裂に伴う抗争の恐れが多い。犯罪集団なのに堂々たる社会的存在。外国人の友人が日本の理解出来ない点の一つだと首をかしげた。(読者に感謝)

 

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2015年9月 2日 (水)

人生意気に感ず「全裸殺人事件。防災対策の基本は。東京五輪。群馬は」

 

 ◇不可解な事件が余りに多い。犯罪は社会の実態を背景に起きる。最近の犯罪現象は社会の質的変化を反映するものだろう。劇団の女優が殺され全裸で発見された。その体には、加害者の唾液と皮膚が付着していた。私は想像を掻き立てられる。 

 二人の中1生徒の殺害も捜査は謎に包まれて膠着状態に見える。これらの事件を通して思うことは捜査の方法も大きく変わりつつあることだ。防犯カメラ、ケータイ、DNA鑑定、コンピューターによる検索能力などが大変な威力を発揮している。科学的捜査といわれるが、この面に於ける捜査力のアップは数字の上でどう現われているのか知りたいものだ。昔の人はお天道様はお見通しと言った。科学の力はお天道様である。「天網恢恢疎にして漏らさず」という諺もある。天のしく法の網は、目が粗いようだが決して悪事を逃さない。しかし、犯罪を少なくする根本は健全な道義心や倫理観を育てることである。

 

◇昨日は防災の日。首都直下型や南海トラフ型の巨大地震が近づいている時なので、各地の非難訓練には緊張感が窺えた。

 

 防災の基本は自助と共助である。この二つを結びつけることが重要だ。地域社会の連帯が崩れていく社会である。「隣りは何をする人ぞ」では共助が成り立たない。普段からの声かけの習慣づくりが求められる。

 

 東京都の防災訓練の報道を見て思った。巨大なマンションとそこに住む高齢者たち。いざという時、どう逃げるのだろう。首都直下型の確率は30年以内に70%というもの。それは明日かも知れないのだ。

 

◇オリンピックの準備が大揺れである。新国立競技場の問題に加えて、シンボルマークの取り下げで大騒ぎ。私が恐れるのは「首都直下」だ。首都直下型が近づいている状況下で、よくぞ東京に決まったものだと改めて思う。東京五輪の後に巨大地震が来ることを祈らずにはいられない。

 

◇群馬は大丈夫という安全神話が依然として人々の心を支配している。県議現職の頃は、西群馬及び太田のあたりの活断層の問題、赤城南麓の弘仁大地震などを取り上げて警鐘を鳴らしてきた。「大災害が近づいている」と文章で書いたら非難したお年寄りがいた。災害は忘れた頃にやってくる。しかも必ずやってくることを今こそ認識しなくてはならない。(読者に感謝)

 

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2015年9月 1日 (火)

人生意気に感ず「放たれた野獣。武藤議員のスキャンダル。北京女子マラソン」

 

 ◇中1の二人の殺害と山田容疑者のことが連日、新聞、テレビ、週刊誌で報じられている。平和で豊かな社会の傍らに欲望が渦巻くどす黒い世界が広がる。無秩序で危険に満ちたジャングルだ。野獣の咆哮が聞こえるようだ。山田容疑者は黙秘を続ける。余りに多い傍証。事実とすれば山田容疑者は捕えられた野獣である。新聞やテレビなどでは報じることが憚られる事実が多くあるらしい。 

 2002年に複数回の事件で逮捕されている。「男子中学生に手錠をかけたー強盗、監禁」、

 

「17歳の少年二人を監禁し顔に液体をかけ火をつけたー障害」、「監禁した少年の性器をもてあそんだー強制わいせつ」等。山田は、これらの罪で、長期の再犯者ばかりが入る徳島刑務所で12年間服役した。この刑務所は受刑者への虐待、受刑者の集団告訴、暴動などが示す悪名高い刑務所である。

 

 私の想像だが、山田は服役で野獣と化したのではないか。恵まれない少年時代、高校にも行かなかった。人間は人格の基本がしっかりしていなければ、環境でどうにでもなってしまう。刑務所は犯罪の学校とも言われる、血気の若い時代の12年間の刑務所生活は地獄に違いない。様々なことを教え込まれる。刑の目的には矯正があるが、現実はほど遠いことは事実が示している。

 

 出所は禁猟区へ野獣を放すようなもの。早速、少女をナンパし、乱交パーティに参加している。職務質問で手錠やスタンガンが見つかったのは乱交パーティの後のことだったという。中1の二人はこんな野獣の餌食になったのか。野獣は死刑を頭に描いて必死に黙秘を続けているのだろう。

 

◇自民党を離党した武藤貴也衆院議員のスキャンダルにまたかと思う。日本の国運が国会にかかった極めて重要な時に、政治不信に拍車をかける事件だ。未公開株のトラブルが報じられて自民党を離党した。これだけかと思ったら今度は更に酷いことが報じられている。未成年の男を一回2万円で買ったという。議員宿舎も利用した。買われた19歳のイケメンの告白であって、どこまで事実か分からない。事実とすれば議員を辞職しなければならない。

 

◇北京女子マラソンを見た。すっかり近代化した北京郊外の光景にも驚いたが日本の女子の姿に感動した。7位入賞。11月3日、私は県民マラソンで10キロを走る。自分の姿と重ねて見た。(読者に感謝)

 

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