« 人生意気に感ず「闇サイト殺人犯死刑。死刑制度は。硫黄島の戦い」 | トップページ | 小説「楫取素彦物語」第17回 »

2015年6月27日 (土)

小説「楫取素彦物語」第16回

「は、は、は」

 二人は同時に心地良い笑い声を上げた。考えが一致したことを認め合った瞬間であった。

「今日は松陰殿の御高説を聞けて大変有益った。学問に、生きた学問と死んだ学問がある事を知りした。知行合一の本当の意味で国難に役立てるのが学問の役割と知りました。萩へ帰ったら私は私の学問で国難を訴えようと思います。長州の役割が如何に重要かを江戸遊学とあなたの話から知りました」

 伊之助は一歳年下の松陰が今、自分の師のように感じられた。

「松陰殿は良い家族をお持ちで心強いですね」

「あなたとてそれは同じこと」

「男だけの家は殺風景です。妹が三人もおられ羨ましい」

、家にいる二人もいずれ嫁いで他家に行きます。動乱の世で幸せにと願っています。一人は寿と申しそろそろ年ごろですが、なかなか男勝りでな、女にしておくのが惜しい。男なら今ごろ萩にはおらん。目の色をかえてこのあたりを飛び回っているでしょう。

もう一人はまだ子ども。文と申すが、お茶目で末っ子のせいか甘えん坊です。母が心配しています

家族の話になると松陰はいかにも嬉しそうであった。いつしか江戸屋敷に夕闇が迫っていた。

 

 

五、嫁取り

 

 

 萩に帰って間もなくの頃、伊之助嫁取りの話があった。しかも相手は松陰の妹と知って伊之助は驚いた。すっかり忘れていたがあの時江戸屋敷で松陰が話した人に違いない。伊之助は松陰の妹ということで不思議な縁を感じた。

 会うと、娘は利発そうで細面の顔は松陰と似ている。すっきりした鼻筋の線ときりっと結んだ口元は純粋で一途な性格を現しているようだ。伊之助は江戸で松陰が語った様子を懐かしく思い出していた。

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

|

« 人生意気に感ず「闇サイト殺人犯死刑。死刑制度は。硫黄島の戦い」 | トップページ | 小説「楫取素彦物語」第17回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小説「楫取素彦物語」第16回:

« 人生意気に感ず「闇サイト殺人犯死刑。死刑制度は。硫黄島の戦い」 | トップページ | 小説「楫取素彦物語」第17回 »