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2015年6月28日 (日)

小説「楫取素彦物語」第17回

「江戸でお兄さんからあなたのことを聞きました」

「まあ、大兄(だいにい)さんに」

 寿は顔を上げて驚いた様子で言った。ぼっと頬を染めた表情に兄への思いが出ていた。松陰の家族は大二郎と呼んでいたのだ。輝く瞳を見て伊之助は美しいと思った。

「お兄様は元気でありましたか」

寿は意を決したように再び顔を上げて聞いた。

「お元気で、国事に奔走されています。立派な兄上ですね。私もとても話が合いましたし、教えられることも多かった

「まあ、それはようございました

寿は頬をいっそう赤くして嬉しそうであった。緊張と不安でいっぱいであった寿は懐かしい江戸の兄のことを聞いて安心し、江戸で共に過ごしたという伊之助のことを頼もしくそして好ましく思った。

 家では母の滝が大変喜んでいた。

「伊之助様は学問に優れた方です。大二郎の同志と聞いて母も安心しました。お前、まことの良縁ですよ」

「お姉さまよかったわね。おめでとうございます。文もいまにそんな立派なお婿さんにあえるかしら」

は、はしゃいだ様子で瞳を輝かしている。

二人は華燭の典を挙げた。伊之助二十五歳、寿十五歳であった。

 間もなく江戸の松陰から家族の下へ手紙が届いた。それには、妹が小田村氏に嫁したことは誠にでたい、彼ら三兄弟は皆読書人である、この一事をとっても大変嬉しいと書かれていた。

 

※土日祝日は中村紀雄著「小説 楫取素彦」を連載しています。

 

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