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2014年9月21日 (日)

随筆「甦る楫取素彦」第127回

本来の情欲だけに絞れば、一時の閨房(婦人の部屋)の便を得られ、「欲火の発動を薄くし」(情欲を抑えられ)、「無益の浪費を減じ」、「一挙両全」の策となるだろうと主張する。
今日の倫理感からは失笑を禁じ得ないが、これが公娼制度下の男性中心社会の現実論であり、「地域を限って」の提言と共に、それなりに社会の改善を目指すものであった。
社会が一変し、日本の歴史上初めて民選による議会が誕生したときの事である。妙な発言ややりとりが現れるのも無理はない。兎にも角にも、これがその後、今日に至るまで続く地方議会の原点なのであった。
◇第一回県会のその他の議題として女子模範学校設置の審議が注目される。
次のような主張であった。
「前橋、高崎、桐生、板鼻等女児学校が続々と開設されている。これは女子教育を一日もおろそかに出来ないことを父兄が理解するからである。しかし、その開設は日も浅く、教員に適当な人材を得ることが出来ない。つまり、学業の点は進んでも、言語応答、行住坐臥(ぎょうじゅうざが―日常の動作)については、婦徳にかなわない者もいる。だから女子模範学校を設けて婦徳を教える教員を養成することが急務である。そういうわけで昨年、議決して新築に着手し本年より開業しようとしているので、ここにあげる予算が必要だ」として、月給、校費生徒費、書籍器材費等を挙げて、予算の説明をし、議員の審議に入る。やりとりから明治初期の女子教育に対する考えが窺える。
「女子模範学校は教師を養成する所か、それとも女子の業を教える所か」(議員)。
「女子の教師を育成する所なり」(役人)。
又、役人は次のように答えている。女子模範学校の名は師範学校と同一の意味であること、位置は師範学校附属の二階家で、男子とちがいイスに腰かけて授業を受けさせず座ったままとし、婦徳を守ることを旨とし裁縫育児のことまで教える、等。
女性は家で育児と家事がその本来の役割という時代の女子教育が狙いであった。
かくして第一回の県会は幕を閉じた。
閉場式は、6月5日、師範学校の仮議場で厳かに行われた。楫取県令が正面の席につき、宮崎有敬議長、星野長太郎副議長以下多くの議員が参加して行われた。
県令楫取は、開場以来の議事の労をねぎらい、その委細を書いた声明文を議長に渡し、議長は受けとって書記に朗読させる。この時議員は全員起立して聞いた。
その大要は次の通りである。「農、蚕の繁熾(はんし)①の候にもかかわらず、各員、公衆のためにした真議討論は万全であった。まことによくその職を尽くしたことに素彦は感謝と賞讃に耐えない。今ここに閉場式を行うに当り、各員の労を謝しあわせて、この議会が年を追ってますます盛んになり、公衆の便益になることを希望す」
※繁熾(はんし)とは非常にさかんという意。

土日祝日は中村紀雄著「甦る楫取素彦」を連載しています。

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