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2014年5月24日 (土)

随筆「甦る楫取素彦」第90回

 果せるかな、ペルーは日本に対して損害賠償を求めて訴えを起こした。日本は、人間を奴隷として売る立場の人に損害賠償を求める権利はないとつっぱねたが、ペルー側は対抗して、ある訴訟資料を提出した。日本は当初それが何を意味するのか分からなかった。それは女郎の証文であった。ペルー側の言い分は、自分たちは労働契約を交わして労働に従事させるものであるが、日本の娼婦の制度は女を拘束しその肉体を売らせるという正に奴隷の制度ではないかというもの。次のような主張だった。「日本側は奴隷契約は無効であるというが、日本では遊女売買の約定というもっとも残酷な奴隷契約が有効と認められているではないか」。そして、その証拠として、遊女の年期証文の写しと横浜病院の娼妓検診の医治報告書を提出。この報告書では、遊女の悲惨な性病の実態が暴露されていた。

 政府は、驚いて大政官布告第295号を出し、女郎の解放を宣言した。これは、世界が注目する訴訟の場で政府が対面を重視した結果ではあるが国の最高の法令によって宣言したことは極めて重要で、その後の廃娼運動に大きな影響を及ぼすことになる。

 布告の内容は次のようなものであった。「人身を売買致し年期を限り其主人が意のままに虐使することは人倫にそむき有ってはならないことだが、従来、年期奉行等種々の名目で行われてきた。その実態は売買同様の行為であって、もっての外であるから今後厳禁とする」

 外国に対する対面を重視したことは事実であろうが、それだけで軽々に重大な宣言をなす筈はない。それは明治政府の基本方針と合致するからであった。基本方針とは、明治元年の五箇条の御誓文である。その一項に「旧来の陋習を破り天地の公道に基くべし」とある。陋習(ろうしゅう)とは悪いならわしのことである。

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