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2013年6月15日 (土)

『炎の山河』第五章 地獄の満州 第64回

 彼女は、家族を全部日本へ呼び寄せたいと考えていた。しかし、その準備はなかなか容易ではなかった。迎える日本の側と、送り出す中国の家族の側と、両方にいろいろな条件が整わねばならないからである。数年はあっという間に過ぎた。

 この間、末娘が日本に来て、しばらく母子の生活が続いた。この末娘は、その後中国で結婚式を挙げることになっていたので、そのときは、松井かずは末娘と一緒に中国へ行き、結婚式に出席した。やがて、この末娘の夫婦がまず日本に定住することになり、その後、その姉である三女が日本に住むようになった。これだけでも、松井かずにとって大仕事であった。残りの家族につき、保証人をさがし、男性については職場を確保して、それは並大抵のことではなかった。このような努力を続ける中で昭和六十三年が終わり、六十四年を迎えた。この年は、日本、中国両国にとって大変な年、それぞれにとって、歴史の曲がり角となるような出来事が起きた年であった。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「炎の山河」を連載しています。

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