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2013年6月 9日 (日)

『炎の山河』第五章 地獄の満州 第63回

 日本へ帰ってみると、母の病気が進んでいた。母ふじは、沼田のほたか病院へ入院していた。松井かずは、母の枕元で、中国のことを語った。母が眠ったかと思い、話を止めると、母を彼女に手を伸ばし、話の先を聞きたがった。

「お前も苦労したね」

母は目を閉じたまま、ぼつりと言った。

「早くお前の家族に会いたい」

「できるだけ早く家族を呼ぶから、早く良くなってください」

 松井かずは、こう言いながら母の額の汗を拭った。

 ふじは、松井かずの帰国後十九日して、この世を去った。八十四才であった。わずかな間ではあったが、母の看病ができ、死をみとれたことは、彼女にとってせめてものなぐさめであった。

 松井かずは、前橋に移り、広瀬町の市営住宅に入って、ひとまず自分の生活を安定させながら中国の家族を呼び寄せる準備を進めることにした。

※土日祝日は中村紀雄著「炎の山河」を連載しています。

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