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2013年6月24日 (月)

人生意気に感ず「我が友ナナ死す。23日午前0時、満月の夜。満13歳」

ナナ、遂にお前と別れる時が来た。ゆうべは、悲しげな声で私を呼んでいたな。もう一度元気なお前の姿を見たかったぞ。昨夜遅く赤城アニマルクリニックで診察を受け、今朝七時、もう一度診察を受けることになっていたのだ。それを待たずにお前は逝った。助けられなかったのが心残りでならない。

 お前は足腰が立たないのに、小屋からはい出して、小屋の南のいつもの狭い所にうつ伏せていた。最後の力を振り絞ってお前が好きなあの場所を選んだのだね。よくやった。偉かった。

 あのフェンスのすき間から鼻を突き出していたお前の姿が目に浮かぶ。私の足音を察知するとお前は黒い鼻を出して私を迎えた。私が飛び上がって鼻づらを叩くと、お前は身をひるがえして門から入る私を待って「ウワン、ウワン」とほえたものだ。お前はもう一度あれをしたかったに違いない。

お前の死を知ったのは、昨夜、23日の午前0時だ。お前の好きな場所は、アジサイの花で覆われ、頭上には、雲の切れ間に満月が輝いていた。人間なら超がつく美人のお前にふさわしい場所をお前は選んだのだね。

 もし、口が利けたなら、最期に私に訴えたかったことがあったに違いない。それは、数年前のフィラリアを克服したことかな、それとも鍋割の絶壁を登った時のことだろうか。フィラリアの時は、お前の血管は細い線虫でいっぱいになった。騙して強い薬を飲ませるのに苦労したんだぞ。アンコにくるんだ薬をお前は疑わしそうな目で眺めたな。鍋割の急斜面では、怯えるお前を強引に引きずり上げたものだ。上から並んで見た下界は素晴らしかったな。よく頑張ったと頭をなでられたお前はいかにも嬉しそうで私の顔をなめた。それを見た私も嬉しくなってお前を抱き締めた。あのことが昨日のように思い出されるぞ。

 お前は13年前我が家にもらわれて来た。ぬいぐるみのように可愛い奴だった。お前に付けられてきた血統書には、天然記念物秋田犬・犬名「菜花號」とあった。3月21日、菜の花の時期に生れたので、この名がついたのだろう。我が家ではナナと呼ぶことにした。いずれもお前にふさわしい名だった。

 父親は「上州勘九郎」、母は「優華」で、父は第65回関東展優秀一席という賞歴をもつ。この血統書には他に曾祖父母のことまで書かれている。私はよく人に私の血統より優れていると言って自慢したものだ。

 成長するにつれ、お前は鼻筋の通った品格のある典型的な秋田犬になった。散歩につれて行くと、犬をつれたおばさんが「いい犬だねえ、それに比べ、お前は足が短くきりょうが悪い」といって自分の犬をながめながらお前を誉めていた。お前の仲間であるハチ公は忠犬の見本とされるが、お前はハチに劣らぬ忠義な犬だった。ロシアのプーチン大統領の所に行った仲間もいるが写真で見る限りお前が上だった。

 ナナよ、ありがとう。お前は私の心の友だった。書斎の扉の外から伝わるお前の息使いや体を動かす気配さえもが、私を励ます力であった。お前はもういない。

 振り返って、一つ心残りなのは、小犬を育てる母犬としてのお前を見れなかったことだ。その親子の姿を含め、お前のことは、これからも私の胸にいつまでも生き続けるだろう。ナナよ、安らかに眠れ、さようなら。

満月のアジサイの下ナナ逝きぬ

          遠吠えの音(ね)天に響きて

お前の友、お前の主人

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