« 人生意気に感ず「新型襲来か。戦争か。シベリア資料館を」 | トップページ | 『炎の山河』第5章 地獄の満州 第44回 »

2013年4月13日 (土)

『炎の山河』第五章 地獄の満州 第43回

 この頃、松井かずたち残留婦人に関して、日中間に一つの変化が見られた。正式の国交がない中、民間団体の努力の結果、夫や子供に関する事情で日本に引揚げることが出来ない女たちのために、一時帰国の道が開かれたのだ。いわゆる、1956年(昭和31)の天津協定に基づくものであった。

 親切な公安局の役人が松井かずに協力してくれた。松井かずは、夫に話せば反対するにきまっていると思った。だから、明日、家を出発するという日になって、夫に切り出した。側に公安局の者が立ち会っていた。

「明日、日本へ帰らせてもらいます。すぐに戻る一時の帰国です」

松井かずが正座して改まった口調で話し出すと大騒ぎになった。夫は、口を結んだまま一言もしゃばらない。近くの親戚もかけつけてもうこのまま日本に行って中国には戻らないのかとか、子供はどうするのか、子供を置いてゆくのは薄情なことだとか、喧々ごうごう、部屋は興奮に包まれていた。

※「楫取素彦読本」現在煥乎堂1F郷土誌コーナー、県庁地下 生協書籍コーナーで好評発売中です。(1冊300円)

|

« 人生意気に感ず「新型襲来か。戦争か。シベリア資料館を」 | トップページ | 『炎の山河』第5章 地獄の満州 第44回 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『炎の山河』第五章 地獄の満州 第43回:

« 人生意気に感ず「新型襲来か。戦争か。シベリア資料館を」 | トップページ | 『炎の山河』第5章 地獄の満州 第44回 »