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2012年5月 5日 (土)

「上州の山河と共に」第129回 政治家への道

 

私が前に立つと、騒ぎは止み、水を打ったように静かになった。

「申し訳ありません。私の不徳の致すところであります。皆さんの温かいご支援を十分に生かすことができませんでした。深くお詫び申し上げます。」

 私がここまで言ったとき、広間のあちこちから、女性たちの泣き声が一斉に起こった。

「敗けたのではない、あと僅か票が足りなかっただけだ」

誰かが大声で叫ぶと、これに呼応するようにあちこちから声が上がった。

「そうだ、そうだ、戦いはこれからだ」

私の胸を熱いものがつき上げ、こらえきれず涙が頬を伝って流れた。

 喧騒の広間は、去る人もほとんどなく、盛り上がる熱気に包まれていつまでも夕闇の中で燃えていた。

一夜が明けた。新聞に目をやると、4月13日の上毛新聞は、次のように書いている。

午後8時50分、開票結果の連絡が入ると、前橋市小坂子町の事務所は「中村落選」の結果を予想外として受けとめた。選挙期間中「新旧交代」を訴え、四十回以上の個人演説会をこなし、当選の感触を得ていた。しかし、この結果・・・。中村氏は、詰めかけた支持者を前に「申し訳ない。私の努力が足りなかった」と一言挨拶。声を詰まらせながら頭を下げると、事務所は溜息や泣き声に包まれた。

私は、改めて落選したことを実感した。言いようのない淋しさに襲われる。杜甫の詩、「国破有山河城春深草木」の心境であった。(読者に感謝)

※土日祝日は中村紀雄著「上州の山河と共に」を連載しています。

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