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2012年5月 4日 (金)

「上州の山河と共に」第128回 政治家への道

長い間ボランティアで働いてくれた人々の顔、決起大会に集まった多くの人々の顔、これら無数の顔が歓喜で燃えるようになったり、悲嘆に沈む顔になったりして、私の頭に浮かんでは消える。妻も居た堪れずに青い顔をしてそわそわしている。

 運命の時はやってきた。午後八時が近づく頃、小坂子の選挙事務所の広間は、今や遅しと結果を待つ人々で一杯であった。

 広間の前面には、一段高い台の上に中古のテレビが設置され、人々の目は群馬テレビの開票速報に注がれていた。

 私と妻は、別の一室で待機していた。狭い部屋は、重苦しい沈黙が支配し、私は、時々そこから逃げ出したいような恐怖に駆られていた。妻は、頭を下げ、床の一点をじっと見詰めている。こんな思いをするのなら始めなければ良かった、と後悔の念が頭の片隅をよぎる。時々広間のざわめきが伝わってくる。一際大きなどよめきが聞こえた時、突然ドアが開いて、福島浩が入ってきた。

「どうなんだ」

「うん」

福島は、一瞬唾を呑み込むような仕草をしてから言った。

「駄目だった。僅かの差だ。兎に角、二人とも来てくれ」

 何ということか。私は、体の中心から力が抜け、一瞬、頭の中が真白になるように感じた。しかし、私はすぐ我にかえり、広間に向かった。広間は、立つ余地がない程にいっぱいで、興奮した人々の声が飛び交っていた。(読者に感謝)

※土日祝日は、中村紀雄著「上州の山河と共に」を連載しています。

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