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2012年3月25日 (日)

「上州の山河と共に」 第116回 政治家への道

 「市の工業課から、選挙事務所に貸すことは目的外使用を禁じる約款に反すると言ってきています」

 ガーンと一撃をくらった思いで言葉を捜していると、電話の主は続けて言った。

「調べて見たんですが、あと一ヶ月で十年が過ぎるところです。申し訳ありませんが、市からそう言われたのでは、お貸しすることが出来ないのです」

 またかと思い、目の前が真暗になる思いであった。誰かが事細かに調べて市に通知しているのかも知れない。それにしても、それをそのまま受け入れて通告してくる市の態度にもすっきりしないものを感じる。またも、大きな壁に突き当たってしまった。天は私を見捨てようとしているのだろうか。私は絶望感に駆られて、しばし抗議する力すら湧いて来ない程であった。

 しかし、いたずらに腹を立て、絶望して足踏みしている時ではない。もはや一刻の猶予も許されなかった。このままの状態が続き、選挙が出来ないのではと、黒い不安が胸をよぎる。

 血眼になって捜しあてた場所は、小坂子町の外れ、畑の中にぽつんと置かれた、ある企業の資材置場であった。所狭しと置場いっぱいに雑然と入れられている建築資材を片隅に積み上げ、整理して、やっとの思いで選挙事務所用のプレハブの建物を完成させたのは、三月も末のことで、もう告示が間近に迫っていた。

 前橋最北のこのような山里に県議選の拠点を設けるのは前代未聞のことと思われた。

目前に迫って見える赤城山から文字通り直撃するように吹き寄せる赤城颪は、プレハブの屋根をガタガタと鳴らし、中にいる者を心細くさせた。また、夜ともなると、小高い丘に立つ事務所からは、市街地の夜景が一望できるが、それも、私の目には、心細さを募らせるものでしかなかった。(読者に感謝)

※土日祝日は中村紀雄著「上州の山河と共に」を連載しています。

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