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2011年1月 9日 (日)

第五章 地獄の満州

このような日本の自由と豊かさを子供たちにも味あわせてやりたいという気持ちと、子供たちはこのような日本にやってきて大丈夫だろうか、きちんとやってゆけるだろうかという不安とが入り混じった複雑な心境であった。

 松井かずは、八か月日本に滞在し、昭和51年、また中国に戻っていった。祖国日本の復興を身体全体で確かめ、肉親にも会えた。そして、日本へ帰国できる確かな道も開けた。日本を後にしながら松井かずは、自分のこれまでの人生が無駄でなかったと思え、嬉しかった。もう慌てることはない。中国で自分のやるべきことをきちんと済ませ、晴れた気持ちで日本に帰国しよう。彼女はこう思った。

 中国でやるべきこと、それは、主に子供のことであった。4人の娘は次々に結婚適齢期に入ってゆき、松井かずには、母親として娘たちを見守って手を差し延べてやることがいろいろあった。彼女が中国に戻ってから、まず、長女と次女が結婚した。そして、娘たちは妊娠し、出産した。長女の子は1500グラムという大変な未熟児で生まれたので、松井かずは必至で世話をし、その育児を手伝った。孫の誕生は、彼女にとって感慨深い出来事であった。自分の出産のときは、生きること、育てることで夢中であったが、娘の出産を助け、孫を手にとってみると、その温もりを通して、中国との関わりの深さ、中国で生きてきたことの重さを改めて感ずるのであった。

※土・日・祝日は中村著「炎の山河」を連載しています。

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