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2011年1月 8日 (土)

第五章 地獄の満州

あるとき、一人の同級生が訪ねてきた。

「日本は戦争に負けてよかったのよ」

「あらそう、どうして」

「だって、戦争に負けなければ、戦争をする国が続いていたわけでしょ。男は兵隊にとられるし。こんなに何でも自由で、いい暮らしができる国にはならなかったと思うよ」

 松井かずには、この同級生の言葉がよく分からなかった。確かに日本は良い国らしい。しかし、それは、戦争に負けたこととどのような関係にあるのか。そして、自分たちのようにお国のためということで満州に出かけて行って苦労した人や戦争であ亡くなった多くの人は、みな無駄なことをしたのであろうか。松井かずの頭に浮かぶ疑問に気付くはずもなく、同級生は、カラオケ教室のこと、買い物ツアーのこと、家を建てたこと、自動車を買い替えたことなど、松井かずには信じられないような華やかな日常生活のことを話し続ける。こんなに豊になって、こんなに楽しい生活をしている日本人は、昔の戦争のことなど思い出したくないのだろう。そんな過ぎ去ったことはどうでもよいことなのだろう。松井かずは、同級生の口元を見詰めながらこう思った。そして、このとき、中国にいる子供たちのことが思い出された。

※土・日・祝日は中村著「炎の山河」を連載しています。

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