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2009年11月 1日 (日)

遙かなる白根 第137回 子どもたちの叫び

「私、オートバイ乗る乗のって怖いし、暴走族に入ってい人、にがてなんだ。それに付き合っている人がいるし・・・」

後の方の言葉は耳に入らなかった。U君の頭は真っ白だった。甲州街道を150キロで飛ばした。涙があとからあとから流れて止まらなかった。

それから2年後、U君は風の便りに彼女が大学生になったことを知る。地元のラーメン屋でバイトをやっていると聞いて、そっと見に行った。髪を束ね、化粧もせず一生懸命働いている姿を見てU君は立ち尽くした。バイトをしながら大学を卒業して、保母さんになろうとしていると友達に聞かされた。その時、U君は雷に打たれたようにはっとすることがあった。自分の夢に向かって真剣に努力している彼女と比べ俺は夢も希望もなく、ただ遊んで暮らしている人間のくずだ。そう思うとU君は急に恥ずかしくなり、その場をそっと立ち去った。

U君は友達に彼女のどこがそんなにいいのかと聞かれたことがある。

「彼女の何事にも一生懸命取り組む姿と真剣な表情、素直な心が好きなんだ」

U君はこう答えた。U君はいままで自分はいいかげんに生きてきたと思う。道をはずれたことも沢山あったと反省する。これからは前向きに生きて自分の夢を実現させたいと思っている。それが彼女の生き方に一歩でも近づくことだし、自分にとっても最良のことだと思うのである。

―失恋、そして、新たな決意、このようなU君にとっての一大事が白根開善学校の門をたたく1つの動機であったと思われる。U君は回り道をして白根開善学校に出会った。その回り道の道中では、暴走族に入ったり、いろいろと外れた行動もやった。そして彼女との出会いと別れは、U君の心の底に眠っているものを揺り動かし目覚めさせた。白根開善学校は、U君にとって、人生の再スタートの場面であったのだ。

★この連載も、1121日で終わります。次の連載は拙著「炎の山河」です。「地方から見た激動の昭和史」という副題がついています。恩師の林健太郎先生が「すぐれた歴史叙述」と評価してくれました。どうか、ご覧下さい。

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