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2009年10月31日 (土)

遙かなる白根 第136回 子どもたちの叫び

その間、

「俺は相変わらず不良交友を続け、仕事もせずぶらぶらしていた」

そんなある日のこと、U君は町で偶然、あの好きだった女の子を見かけたのだ。

U君は、はっとして胸が高なるのを覚えた。家に帰ってからもいてもたってもいられない。U君は当たって砕けろ、という思いで電話をかけた。いつものU君らしくなく緊張して、やっとのことで会って欲しいと告げた。彼女は、最初戸惑っている様子であったが会うことを約束してくれた。約束の日が来た。本当に彼女は来てくれるのか。U君は不安と期待で胸が張り裂けるようであった。

約束通りに彼女は現われた。白のスカートにピンクのセーター、ショートカットの彼女は、しばらく見ぬ間に娘らしく成長し、美しかった。二人は新宿をブラブラして喫茶店に入った。中学の時の話や世間話をいろいろして別れるとき、彼女は、U君に向かって言った。

「ずい分昔と変わったのね」

U君は、この時、彼女が言った意味が分からなかった。別れるとき街角のショーウインドウのガラスに写った二人の姿を見てU君は思わず笑ってしまった。髪をリーゼントにして金髪に染め上げ革ジャンを着た自分と、ごく普通のどこにでもいる高校生の彼女。あまりにもちぐはぐな二人の姿がそこに写し出されていたのだ。しかし、それが何を意味するのか、まだU君は気付かなかった。

いく日かが過ぎて、U君はオートバイを走らせ、彼女の家の近くから海へ行かないかと電話をかけた。オートバイに彼女を乗せて海に行くことが中学の時からのU君の夢だったのだ。U君は受話器を握って、彼女を後ろに乗せてオートバイで浜辺の波打ぎわを走る姿を想像していた。彼女の髪とスカートが風になびく様がちらついた。しかし、受話器の向こうから伝わる言葉はショッキングなものであった。

★この連載も、1121日で終わります。次の連載は拙著「炎の山河」です。「地方から見た激動の昭和史」という副題がついています。恩師の林健太郎先生が「すぐれた歴史叙述」と評価してくれました。どうか、ご覧下さい。

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