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2009年10月25日 (日)

遙かなる白根 第135回 子どもたちの叫び

白根開善学校は山奥の質素な、そして厳しい環境の中で物質主義の弊害を子ども達から洗い落とし、人間の本来の生き方、そして自分の行き方を身につけさせようとしている。しかし、下界から登ってきた子どもたちにそのことを分からせることは至難の技である。子ども達は、白根開善学校で体験した様々なことの意味をよく理解できないまま、この学校を去って行くが、体験から得たものは彼らの心の底に根を下ろし、じっと時が来るのを待っている。子ども達が世の中で様々な壁に突き当たる時、彼らは白根の山の生活を思い出す。この時、彼らの心の底の小さな根は、芽を押し上げ、彼らを支える力となって成長してゆくであろう。

昭和59年度高等部3年U君

―暴走族に、そして失恋

 これは、元暴走族の少年の純粋な失恋の物語である。白根開善学校に出会うまでの青春の熱い一コマが語られる。

「俺が中学生だった頃、隣のクラスの女の子を好きになった」

 これはU君の話の冒頭の一節である。U君は、この女の子に胸の中を打ち開けられなかった。U君は、中学生の頃は不良に憧れて突っ張っていたのだ。だから真面目に勉強するこの女の子を気にかけながらも、近づき難い距離を感じて胸の中を打ち明けられなかったらしい。他の女の子と付き合ったことも2、3回あったが、この女の子のことを忘れることは出来なかった。

 U君は高校へ進む。しかし、間もなく高校を中退してしまった。

「中退後は暴走族に入り自分で積木をくずしていった」

 U君の家庭に、またU君の心に何があったのか、そしてU君を暴走族にまで突き動かしたものは何か、U君は語らない。

“積木をくずしていった”と言っているが、この弁論大会の前年、昭和58年、テレビドラマ“積木くずし”が放映され話題を集めたことがあった。家庭内暴力、少女の葛藤、家庭の苦しみなどを描いたものであるが、U君は自分の荒れた高校生活を、この“積木くずし”と重ね合わせて振り返ったのかもしれない。

 高校中退後一年が過ぎた。

◆土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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