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2009年10月12日 (月)

遙かなる白根 第131回 子どもたちの叫び

白根開善学校には、彼と同じ理由で入学してきた子もいるのでほっとすることができた。東京にいた時には学校に行かず、家でぽけーっとしていた。それは辛いことだった。誰でもいい。人と話しがしたかった。東京の学校では、あれほど嫌だった集団生活に、ここではすっと入り込むことができた。それは、友達のおかげだ。友達というのは不思議だ。伝わってくるのは家族とは違った安心感なのだ。自分が社会から認められたような幸福感を与えてくれる。友達は優しくて面白い。冗談を言い合ったりするのが何ともいえない程楽しい。K君は、東京の頃の生活と比べながらしみじみ、こう感じるのだ。

寮にはいろいろな人がいるが、K君のベッドの上にいるタコみたいな先輩は特に面白い。この先輩は一緒に遊んだり、勉強を教えてくれたり、またいろいろ世話をしてくれる。たまには、この先輩に学習室やトイレに閉じ込められたり、つねられたりもするが、とってもいい先輩である。

K君は時々、ベッドに入るとき、この先輩と翌朝のパンや牛乳をトランプで賭けることがある。負けた夜は、テーブルに出されるパンのことがいつまでも頭から離れなかった。

「約束だから」

翌朝、K君がパンを差し出した。

「いいよ」

タコ先輩は、笑いながらこう言って返してくれた。嬉しかった。K君は、この先輩が大好きなのである。

K君が寮の生活で気をつけていることは、友達の悪口を言わないことである。友達は大切だし、嫌われたくないからだ。しかし、向こうがK君の欠点などあんまりひどいことを言ってくると、とてもむかつく。しかたなくしかとすることもあるが、しかとするのはとても辛いことだ。K君はこの学校に来て、友達の大切さが分かったことがとてもよかったと思っている。K君は、これからも友達を大切にして、この学校の生活を送っていきたいと考えている。

◆土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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