「尾身幸次敗る、その敗戦の弁」
◇午後8時16分、宮崎候補の当確が出た。既に尾身不利の確かな情報を得ていた私はやはりという気持ちで受け止めた。尾身さんは、どのような顔で事務所に現われるのかと私は緊張してその時を待った。
その間、私は、昨夜の打ち上げ式のことを思い出していた。尾身さんの行動力の凄さは超人的だった。76歳の細い身体のどこにそのエネルギーが潜むのか不思議だった。倒れなければよいがという私たちの心配をよそにマラソンコースを最後まで全力疾走したのだ。
打上げのセレモニーで尾身さんは語った。最後の政治生命をかけて戦っています。メチャクチャなことをお願いしてきました。私も命がけで戦いました。今、生きてここにいられることを天に感謝します、と。この瞬間、選挙事務所を埋め尽くした人々は勝利を信じたと思う。これ迄の選挙の常識からすれば、このような状態で打ち上げを行う場合必ず良い結果が約束される筈であった。
8時26分、尾身夫妻が現われた。夫妻は選対幹部1人1人にお世話になりましたと語りかけ握手した。尾身さんは、心配していたようながっくりと気落ちした様子はなく冷静だった。
尾身さんは用意された壇上に登りマイクを握る。報道陣のカメラは一時間も前からこの場面のために待ち受けていた。会場の人はそれ程多くなく空席もあった。山本、中曽根両国会議員の姿も見られた。
「人事を尽くして天命を待つというところまで頑張りました。本当に皆様のお陰です。政治の流れもありましたが、私の不徳の致すところです。深くお詫び申し上げます。20数年の政治家の生活は大変有意義でありました。政治家としての尾身幸次は、これで終わりでありますが、日本のため、世界のため、これからもやることがあるので頑張っていきたいと思います。皆さん本当にありがとうございました」
大きなドラマの終宴の一コマであった。まわりへの配慮に欠けるといわれることもある強引さで強烈な個性と信念を貫いた。科学技術基本法の実現、群大への重粒子線施設の誘致、沖縄の科学技術大学院大学の実現などは尾身さんがいなければ不可能であった。継続は力、そして貫けば世間は認め人はついてくる。この事を私は教えられた。
時代の大波は、このような多くの人材を押し流してしまった。政治家としての経験が浅い多くの若者が当選した。官僚に支配されない政治といっているが、彼らに官僚を動かすことができるのか。今回の選挙結果について懸念される点である。こういう事態も踏まえた上で回転していくのが時代の歯車なのだろう。
地方の時代が大きく進む。県議会も変わらなければならない。私たちは、今回の選挙結果を謙虚に受け止め新しいスタートの糧にしなければならない。正午から県議団総会がある。(読者に感謝)
★土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。
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