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2009年8月29日 (土)

遙かなる白根(114)100キロメートル強歩序曲

 深夜、開善学校を囲む山や谷も闇の中に姿を隠し、あたりは物音一つせず静かだった。父母会館の窓からもれる淡い明かりが周りの白樺の幹をうっすらと照らしている。熱い議論は午前零時を過ぎても続けられた。結局、上級生が下級生に対して、伝統的に暴力を振るうということは、どんな理由にせよ、許されない、ということで意見の一致を見るに至った。そこで、父母の代表が、自分たちの研修会の意見を、連名で白樺に発表することにしたのである。

次の文は、“父母研修を終えて”の冒頭の一節である。

「皆さん、白樺49号の本文最終ページに掲載された、校長先生、花村父母会前会長の“緊急提案―いじめについてー”を覚えていますか。私は今、高校2年生の父母研修を終えて、あらためてその文章を読んでいます」 

 緊急提案を受け止めて自分たちの考えを全学の人々に伝えたいという意志がここに現れている。父母たちはまず、父母研修の行われている時に、上級生の下級生に対する暴力行為が行われたことを取り上げて強い驚きを示し、事件の重大性を訴えようとする。

「ショックでした。今までうわさに聞いていたことが目の前で起ったのです。しかもこれだけ多勢が参加している父母研修の最中にです」

 この上級生の暴力行為こそ、父母たちがいう悪しき伝統の一例なのだ。旧制中学の寮や昔の男子高校の習慣の中にも、上級生が下級生に気合を入れると称して、殴るなどの行為に及ぶことはよくあった。実は、私の中学時代にもそういう事件は時々あった。そして、私も殴られた経験がある。しかし、時代は変わった。普通の父母たちにすれば、上級生が下級生を殴る、あるいは制裁を加えるということは理解しがたい大変なことなのだ。しかも、父母たちは白根の山奥の特殊な環境に置かれた我が子を、それでなくとも不憫に思っているのである。父母たちの文中、次の部分は白根開善学校の生徒の本質をついている。これは白根の父母に対して初めて語られることと思われる。

◆土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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