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2009年5月15日 (金)

「自殺者3万人が続く異状事態」

◇警察庁によると、昨年中の自殺者は3万2249人であり、これで、3万人を超える自殺者は11年連続である。自殺者は、毎日、どこかでひっそりと亡くなっていくが、3万2千人の人が一ヵ所で一度に死んだら想像を絶する出来事になる。事態はそれ程深刻だということだ。今回発表の統計の特色は20代30代の自殺が増えていること、及び、原因として「うつ病」が最多となっていることである。

 若い人が心の病で自ら死を選ぶ、この異状さをどう受け止めるべきか。社会の異状さが背景にあって自殺に影響を与えていることは間違いない。06年に成立した自殺対策基本法は、自殺防止のための社会的な取り組みを国や地方自治体の責務としている。

 この法律は、未遂者に対する支援や自殺者の親族の心のケアにも言及している。自殺未遂者は、既遂者の10倍はあり、自殺の未遂や既遂が1件生じると、関係の深い人が最低でも5人、深い心の傷をうけるという推計がある。これによれば、年間に、約150万人の人が心の健康を害していることになり、自殺は社会全体の深刻な問題なのだ。群馬県及び本県の各自治体は、自殺対策基本法の趣旨をどのように受け止め、いかなる政策を展開しているか調べてみたいと思う。

◇自殺を望む人は非常に多いから簡単な方法が教えられればそれに飛びつく者が出ることは容易に在り得ることだ。私たちは重大な事件でもすぐに忘れるが、昨年の硫化水素自殺は記憶に新しい。昨年1月から5月までに硫化水素による自殺は489件、517人にのぼったと、警察庁は発表した。

 この硫化水素による自殺者の多くは20~30歳代で、彼らは、インターネットに記

された発生方法に学んで硫化水素を手に入れたものであった。この事態に対して警察庁は硫化水素の原料となる薬品の販売を慎重にすべきことを薬局等に要請し、ネット上の製造や利用を誘う書き込みを新たに「有害情報」に指定した。

自殺者を生み出す、病める社会の陰で、死を誘う毒蛇のようにうごめくのが「ネット」である。ネット自殺という不可思議な出来ごとが数年前から次々に起きるようになった。自殺サイトで知り合った若者が練炭を使って集団自殺する事件が、03年に大きな社会問題となった。

私の家は、子どもの頃、「ミツウロコ、高4寸」という規格の練炭を毎日使っていた。21世紀の最新技術の時代に、あの練炭で集団自殺する若者を哀れに思う。埼玉県の20代の男が「一酸化炭素で逝こうと思っています。自殺したい方を募集しています」とネットに書き込んだら2人の女性が応募してともに自殺した。03年に12件34人、04年19件55人と、このような自殺が次々に起き増えていった。

多くの若者が命を木の葉のように軽く考えているに違いない。他人の命も軽く考えるから簡単に人を殺す。生きる力を教える教育をあざわらうような社会現象だと思う。(読者に感謝)

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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