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2009年5月25日 (月)

「韓国大統領の悲劇・ふるさと塾」

◇今月のふるさと塾(23日)は韓国の大統領がテーマだった。会場へ向かおうとする時、盧武鉉前大統領の死をニュースで知った。大統領在任中、妻などが企業から巨額な不正資金を受けたことで検察の手が伸びていた。前大統領は、遺書を残して30mの岩山から身を躍(おど)らせたのだ。この出来ごとは、私の講演にタイムリーな資料を提供することになった。

 話の筋書きを考えるときは、いかに聴衆をひきつけるかに心を砕く。この日の話は、次のように、盧武鉉(ノムヒョン)の死から入った。「韓国の大統領の悲劇は、余りに強大な権限を自由に出来ることが原因です。今日、報じられたノムヒョンの死も同様だと思います」。

 韓国の大統領は、民主的に選ばれた独裁者といえるのではないかと思う。立法、司法、行政と三権は分立しているが、事実上、大統領は何でも出来る。司法権の決定すら覆してしまう。死刑判決を大統領が特赦で減刑したり、北朝鮮の工作員で服役している者を政治的判断で北に帰してしまうなどが容易に行われる。大統領の権限は事実上三権の上に超越している。だから何でも出来るのだ。強大な権限を手にすれば、濫用に走るのは人間の性(さが)である。

 大統領選では巨額な金が必要で、それを企業から集めるから癒着が生れ、不正蓄財が起こる。全斗煥と盧泰愚(ノテウ)は不正蓄財が発覚し、退任後の裁判で重刑を科された。(全斗煥は内乱罪もあって、死刑、ノテウは懲役22年)

 塾の話は、このようなことにも触れながら、朴正熙と金大中に重点を置いた。朴正熙(パク・チョンヒ)の日本名は高木正雄だったと話すと会場に笑いが起きた。日本の植民地だったころ、創氏改名の制度により日本名を強制されたのである。

 朴は、日本の軍国教育を受け、日本の陸軍士官学校を卒業した軍人である。明治維新を高く評価し西郷隆盛を尊敬していたという。

韓国の歴代大統領の中で最も高く評価されている人が朴である。彼はクーデターにより大統領の座を手にし、「漢江の奇跡」といわれる経済の発展を実現させた。ジョンソン米大統領の要請に応えてベトナムに5万人を派兵。これによって生じたベトナム特需は韓国経済を大いに後押しした。しかし、軍事政権に対する国民の反対は次第に大きくなった。その中心に金大中の姿があった。朴は任期中部下に暗殺されて世を去った。

◇金大中ほど劇的で波乱の政治活動を経て権力の頂点に立った男は稀だ。独裁政権と闘った不屈の人である。東京のホテルから韓国の情報部によって拉致されたことがある。大規模な民主化運動に関わったことで死刑判決を受けた。4度も挑戦して大統領になると、大統領として初めて北を訪ね金正日と頂上会議を実現させ、南北の人々は熱狂した。金大中は、これによってノーベル平和賞を得た。北と南の勝負はついたと見えるが南の民主主義も深刻な問題を抱える。ノムヒョンの自殺はその事を示している。今月も塾は盛り上った。(読者に感謝)

★土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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