「劇団代表の死、尾身幸次の辻説法」
「劇団代表の死、尾身幸次の辻説法」 ◇劇団「ブナの木」の代表、大野俊夫さんの告別式に出た(10日)。脳卒中で倒れ3年にも及ぶ闘病生活をしていた。63歳とは若い。10年ほど前、私は劇団代表という男の訪問を受けた。これが大野さん、そして「ブナの木」との最初の出会いであった。「ブナの木」には、大野さんが演出した何本かの宮沢賢治ものがあり、子ども達の心をとらえていた。 弔辞の用意はなかったが、これが最後と思うとたまらずに私は遺影の前に進み出た。「もう一度あなたと話したかったですね。日本人の心は貧しくなったといわれる中で、あなたの演劇は多くの子どもに夢を与えました。志半ばで倒れたことはさぞ残念だったでしょう」私はこのように語りかけた。わずかにほほえんだ大野さんの遺影は、自分の人生の演出に失敗しましたとつぶやいているように思えた。「ブナの木」はNPOの資格を得て奉仕活動としても盛んな活躍をしていた。教育の面で与える効果は大きかった。大野さんの志をつぐ劇団はしっかりとした歩みを続けている。「大野さん、これもあなたの演出ですね」私は、心の中で、遺影に向って語りかけた。 ◇尾身代議士の辻説法に同行した(10日)。前橋は33度を越える真夏日である。予定の場所に数人しかいないところでも、尾身さんは平然とし、トーンを落とすことなく、時局を語る。いつものことながら、歳を感じさせないこの人の迫力には圧倒される。尾身さんは、100年に一度の不況を脱出するために今審議中の補正予算はどうしても必要なのだと施策の具体例をあげて熱く語った。 尾身さんの情熱と若さの秘密は何かと考えたとき、私は、サミュエル・ウルマンの詩を思い出す。「年を重ねただけで人は老いない、理想を失うときに初めて老いがくる。歳月は皮膚のしわを増すが、情熱を失うときに精神はしぼむ」この詩は、私が自分に言い聞かせるために親しむものである。人生をぎりぎりまで生きようとする者にとって心に響く言葉ではないか。この部分に続くウルマンの次の言葉は更に強烈で、私の胸をあつく打つ。 人は信念と共に若く疑惑と共に老ゆる 人は自信と共に若く恐怖と共に老ゆる 希望ある限り若く失望と共に老い朽ちる ◇予定地の一つである私の事務所前には、この日数十人の人が集まった。この種の集会には余り興味を示さないと思われる団地の新住民の人々の顔が多く見られたことは嬉しかった。実は、この日の朝、公園の草とりの時、私は、今日、この公園に尾身幸次が来て重要な時局について話しますと紹介した。町内の草とりの場で政治を持ち出したのは初めてのことである。草とりの場は町民にとって大事なコミュニケーションの場だ。出来るだけ政治色を出さずに大切な情報を伝える場に出来ればと密かに思う。(読者に感謝) ☆土・日・祝日は、中村のりお著「遙かなる白根」を連載しています。
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