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2009年5月24日 (日)

遙かなる白根(86) 100キロメートル強歩序曲

待望の認可が下りたのなら、何をおいても、その旨を伝える筈だから、そうではない。学校がだめになるのか。だとすれば子どもはどうなるのだ。払い込んだ入学金や寄付金はどうなるのだ。いずれにしろ、山で待ち受ける重大事は、白根開善学校の命運に関わる問題に違いない。山の学校に近づくにつれて、人々の不安と緊張はつのった。

 前日から草津のガーデンハウスに泊まりこんだ人々の耳には、校内の対立が深刻であるとか、それに関連して、私服の警官が入りこんでいるとか不穏な情報も入っていた。

 5月21日、午後三時、人々は、体育館にあつまった。百人を超える父母たちは、教師を取り囲むように半円のかたちに陣取っていた。教師には本吉氏らの主流派とこれに対立する反主流派があった。父母の中には、殺気立つ程に興奮している者もいて、ガランとした体育館には異様な雰囲気がただよっていた。

 父母たちの中には、認可が下りない最も大きな原因は、教師陣の不調和、内部的対立にあると考える者もあった。何人かの父母たちは、この集会のために、本吉校長と、問題点の準備をした上で参加していた。

 集会は、学校側の現状の説明から始まり、父母の学校に対する質問に移っていった。なかには、次のように、本吉氏を厳しく批判する声もあった。

「この学校はまったく準備不足である。教師の研修の期間もなくスタートした。本吉先生は簡単に考え過ぎていたのではないですか。混乱の責任は、先生にあると思います。この学校を今年からはじめたのは間違いだったのではないですか」

 しかし、父母たちの質問は、次第に、反主流派の人に向けられ、質問は攻撃へ変わっていった。

ところで反主流派の教師の周辺には、「ひまわり文庫」の人たちがいた。「ひまわり文庫」とは、徳村彰氏を中心とする、子どもたちに良い本を読み聞かせる地域活動のグループである。この人たちと本吉氏との関わりは、息子の本吉悦理君がこの会の会員だったことに始まる。この会の目的は、単なる文庫活動ではなく、子どもたちに自由と自立を教えることであった。だから、本吉氏の構想の中にある“子どもたちの自由と自立を大切にする新しい学校づくり”という点に共鳴し、その理想の学校づくりを手伝うために「ひまわり」の人々は山に登り、積極的な活動を展開していたのである。

◆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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