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2009年5月 5日 (火)

遙かなる白根(79) 100キロメートル強歩序曲

  その下には、白根開善学校の建設予想図として素晴らしい校舎の姿まで描かれている。続いて記されている学校の説明の中味は、その後、長い茨の道をのりこえて到達する目標であった。建学の思想と学校スタートに至る経緯を知る上で、今でも興味深く読める文である。当時の教育の深刻な状況からして、この記事を読んだ多くの人々の反応が理解できるのである。

「―― 私大で教育学を研究している学者たちが、激しい受験戦争の中で落ちこぼれてゆく子どもの姿を見るにしのびず、草津温泉の近くに全寮制の6年制中高校を建て、みずからも先頭に立って人間回復の教育にあたる。学校運営には、父母はもちろん、最近の教育にあきたりない思いの人たちの力も集め、ユニークな教育を展開しようとしており、6年後にはどんな問題児も、りっぱな高校卒業生に変身させてみせると張り切っている。学校の名は白根開善学校。人間はだれでも善くなるために自分の能力、才能を伸ばそうとしているものなのだから、それを積極的に援助して行こうという意味から、この計画の応援者の一人の村井実・慶大教授(教育学)がつけた。いまの学校教育が受験にゆがめられ、さまざまの問題を抱えこんでいることは言い尽くされた。しかし、実際には何も直らないし、落ちこぼれた子どもは精神的にも萎縮し、問題児として成長してゆく。逆に頭が良すぎて学校がつまらなくなり、落ちこぼれて行く子もいる。そんな子どもたちを引きとり、親から離れた山中の寄宿舎で、質素に厳しくしつける。わからなければ中学三年生の子が中学一年生の教室で勉強をする。その逆もやる。本吉さんを支援する村井教授をはじめとする教育学者グループ、その他のボランティアの人たちに泊まりがけで来てもらい、それぞれ得意のところを指導してもらうー」

ざっと、このような内容の記事である。これらは、塾経営者だった私の経験から言っても、公教育が実現出来ないところをカバーする理想の教育といえる。学校教育の現実の中で悩む親たちにとっては、旱天の慈雨のように思えたことであろう。果せるかな、本吉校長の家の電話は連日のように朝から夜まで鳴りつづけ、各地からの問い合せは、400人以上にのぼったという。他の新聞もとり上げたが、朝日の記事は特にインパクトが強かったようである。

◆土・日・祝日は、中村紀雄を連載しています。紀雄著「遥かなる白根」

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