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2009年4月17日 (金)

「週刊新潮の誤報・ニセ実行犯の意図は」

◇週刊新潮に4回にわたって載った朝日新聞襲撃犯の手記を私は興味深く読んだ。半信半疑ながら詳細にわたる迫真の記述に引き込まれ闇の社会にはこんなことがあるのかと驚いた。ところが犯人だと告白した男が突如「自分は実行犯ではない」と証言を覆し、週刊新潮は誤報を認め、「ニセ実行犯に騙された」という記事を載せるに至った。いったいどうなっているのだろうか。

 朝日新聞阪神支局が襲撃され1人が殺され、1人が重傷を負ったのは、1987年(昭和62年)5月3日のことで、2002年(平成14年)5月3日、時効が成立した。

 朝日の論調に対する攻撃と受け取られてきた。犯人は赤報隊を名乗り、「反日朝日は五十年前にかえれ」などという犯行声明を送りつけた。この事件の本質は、朝日新聞だけでなく、言論の自由を暴力によって脅かすもので、日本の民主主義に対する卑劣な攻撃であった。

 だから、犯人はどうしてもつかまえねばならなかったのである。時効完成後とはいえ、真犯人が名乗り出たということで、日本中が色めき立った。誤報となれば、これだけの大事件を報道するに足る慎重さが週刊新潮には果たしてあったのかが問われねばならない。

 週刊新潮の編集長は、4月23日号で、「事件についての証言が詳細でリアリティがあったため真実であると思い込んでしまった」、「虚言を弄(ろう)する証言者の本質を見抜く眼力がなかったことも深く恥じ入る」、「週刊誌の使命は、真偽がはっきりしない段階にある事象や疑惑にまで踏み込んで報道することにある」等のことを述べているが、この言葉の中に、大週刊誌のおごりが現われていると思う。

 週刊新潮は次の号から編集長が交代するという。今回の出来事は、メディアの誤報の歴史に残るだろう。最近の似たケースといして、日本テレビの「真相報道バンキシャ!」の裏金づくり報道がある。岐阜県のことを報じたものだが情報提供者が証言を翻したのである。日本テレビの社長は引責辞任した。

 誤報の影響は大きい。報道されたらその被害は大きく回復は不可能である。小さなスペースにお詫びの記事を載せて済まされる例が非常に多い。報道にたずさわる者は、日常化している誤報に慣れてしまっているのではないか。言論の自由を守る立場にある者が言論の自由を傷つけているおそれがある。

◇島村という男はなぜ嘘の証言をしたのか。私は今面白い空想をめぐらす。島村氏は網走刑務所に服役中、自分を主人公にした朝日襲撃事件を創作し週刊新潮に発表させたのだ。小説としてみれば、児玉誉士夫、野村秋介、アメリカ大使館などを材料として巧みに使った仲々の出来だと思う。真犯人とされれば面倒なことも生じるので、頃合を見て証言を覆すことは初めから計算していたに違いない。週刊誌などは、このように利用すればいいと考えていたかもしれない。(読者に感謝)

☆土・日・祝日は、中村のりお著「遙かなる白根」を連載しています。

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