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2009年3月14日 (土)

遙かなる白根(61)序章 100キロメートル強歩序曲

テントで待機する父母達の緊迫度も増していた。旅荘の客らしい人も出てきて応援している。

「3人ほど登ってきまーす」

 誰かが叫んだ。坂の下の闇に懐中電灯の微かな光が揺れている。ばらばらと人々が道路に飛び出していった。

「頑張ってー」

「もう少しでーす。頑張ってくださーい」

人々は小さな光に向かって叫ぶ。豆粒ほどの光は次第に大きくなって、やがて光の輪の背後の黒い影がゆっくりと近づいてきた。

「あっ」

誰かが叫んだ。背の高い先輩が後輩を抱きかかえるようにして歩いていた。重なるようにして一つになったその姿に人々は驚きの目を向けたのであった。

「今年は、この子をどうしても完歩させます」

のっぽの少年は、僅かに唇を開いて言った。

二人の後ろに、腰を曲げて老人のようによろよろと歩く子どもの姿が続いた。

「また、二人近づいていまーす」

 到着した子等を迎え入れていた女性がテントに向って叫ぶ。光と共にコツコツという杖の音が近づいてきた。杖の主は周平であった。

「周平君、頑張ったね。もう少しですよ」

 迎え入れた女性は、周平に手を差し出して言った。周平は無言のまま女性に従ってテントに入った。

時計の針は、午後10時40分を指していた。第17ポイントからここまでに周平は予定より多くの時間をかけてしまった。途中どうしても足の痛さに耐えられず、道端に腰を下ろし休んでしまったのである。周平は靴を脱いで痛い所をさすった。側にある拳ほどの石を拾って足の裏を叩いてみた。それから尖った部分を痛い所に、ごりごりと突き立てた。どういうわけか大変気持ちがいい。それを繰り返している中に、不思議なことに痛みが少しずつ消えてゆくのであった。それから周平は遅れを取り戻すために速度を上げてこのJR六合山荘にやっと辿り着いたのであった。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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