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2009年2月21日 (土)

遙かなる白根(54)序章 100キロメートル強歩序曲

その時、車のエンジンの音と共にヘッドライトの先の輪がゆっくりと近づいてきた。どこかで待機していた妻であった。妻の車に付き添われるようにして、私は夜の林道を杖にすがってやっとの思いで抜け出し、再び与喜屋公民館に辿り着いたのは、午後8時50分であった。私の足は骨の中まで痛さが染みとおって、既に自分の足ではないような状態になっていた。もはや限界であった。私は公民館の庭に大の字になって寝ころんだ。雲間からのぞくきれいな星空がはじめて目に入った。影のような薄い雲がゆっくりと流れている。あたりは物音もなく静かだった。私は流れる雲に、現代文明と切り離された悠久な時の流れを感じた。人間の行為が小さく馬鹿らしく思える。周平が足を引き摺って必死に歩く姿が目に浮かんだ。私は訳の分からぬ激しい怒りが込み上げるのを覚えた。目を閉じると混乱した社会の様相が私の胸で渦を巻き、その中を周平が流されてゆく。そして、私もそれを追うように流され、渦の中に巻き込まれてゆくのだった。

偏差値がなんだ。

詰め込んだだけの知識、通過のためだけの試験の技術

それが人間の価値を決めるのか。

愚かしい社会の掟が人々を駆り立てる。

無意味な競争はどこまでも続き、

競争社会の行く手は果てしなく暗い。

子どもたちは反乱の狼煙を上げ、大人たちは途方に暮れる。

軽薄な「文明」がなんだ

人間の小賢しい知恵と驕り。

それは身勝手な途方のない「文明」を築いた。

砂上の楼閣は、今音を立てて崩れる。

心を失った人間の上に。

欲望は欲望を生み、人の命は木の葉のように軽い。

何かを求める若者達の手は

虚しく空を掴む。

 ☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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