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2009年2月 8日 (日)

遙かなる白根(49)序章 100キロメートル強歩序曲

いつしか周平は、国道146号が見える所まで来た。コースは、国道を北上して食堂・ルート146に至り、そこからまた、滝原の林道に入るのだ。周平が国道146に入り、第11ポイントのホテルカリフォルニアに着いたのは、午後4時2分であった。

浅間の高原地帯の森の中を歩き通して国道に出ると状況は一変する。レストランやホテルが並び人々が動いていた。車が次々にスピードをあげて走り過ぎてゆく。浅間の噴火があった江戸時代から、突然現代文明の中に放り込まれたかのように、車の流れと騒音の中を白根の子どもたちは黙々と歩いた。

はち巻きをしている子、先輩らしい子を支えるようにして歩いている二人連れ、片方の足を引きずるように尺取り虫のように歩いている子など様々であった。女の子が立ち止まって走り過ぎてゆく格好いい車を目で追っている。あの車に乗ったら開善学校などあっと言う間に行けるのに、私たちは何のためにこんな馬鹿なことをしているのだろう、女の子はそんなことを考えている風でもあった。周平は、コツコツと杖をついて、車の流れには目もくれず歩いていた。足の痛みが遠のいたり近づいたりしていた。第13ポイントの食堂・ルート146は、目の前にあった。あたりはすっかり暗くなっていた。夜の滝原林道が近づいている。あの真暗な森の中を無事に通れるだろうか。周平は足の痛さも忘れて、夜の林道を想像した。

午後5時35分、周平が食堂・ルート146に到着すると、中は開善の子ども達でいっぱいであった。多くの子どもたちは、温かいうどんをすすったり、カレーを食べたりして、これからの林道越えに備えていた。また、ある子どもは、足の豆をつぶしてヨードチンキをつけ、テーピングをしてもらっている。そして一様に、懐中電燈を点検し、また、リュックの中から小さな鈴を取り出して腰に下げたりしている。滝原の林道と花敷温泉から北の道は、熊よけのために鈴をつけることになっていたのである。懐中電燈の光と、チリンチリンという鈴の音が次々と食堂から出てゆく。周平は足の治療を受け、温かいうどんを流し込んで、合流した総合科の二人の同級生と共に食堂を出た。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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