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2009年1月24日 (土)

遙かなる白根(45)序章 100キロメートル強歩序曲

ところが、今、林道を歩いている子どもたちは、一様に緊張し一点を見詰めるような表情で歩いている。現代の若者が、こんな真剣な表情を見せることがあるのかと思わせる顔付きである。周平も別人のように、幾つも大人になったような表情で歩いていた。周平の中の未知なる可能性が表に出ているようにも感じさせる顔付きである。

林道は進むに連れ、紅葉が盛りであった。黄色と紅の燃えるような森の中を、舗装された道は長い登り坂と下り坂をくり返し、またくねくねと曲がっていた。道の端には、から松の葉や萩の葉、楢やくぬぎの葉が敷き詰めたように厚く落ちている。周平は、その上を歩いた。ふわふわとした足裏の感触が辛さをいやしてくれるようで心地よい。

目の前を小さな流れが横切っていた。森の奥から湧き出した水が、松の根本からちょろちょろと道に落ちて流れているのだ。周平は、膝を着いて水を両手ですくって飲んだ。冷たい感触が喉を伝わって胃の奥まで突き刺さってゆく。あたりには誰もいなかった。そのとき周平は、不思議な音に気付いた。

サラサラ、サラサラ。

微かに鳴っている。耳を澄ますと、雨のような音は森中から聞こえてくる。

サラサラ、サラサラ。

なんの音だろう。目を凝らすと楢やくぬぎの幹の間に、小さな木の葉が舞うように落下している。から松の葉が金色の糸を引くように落ちている。森が合唱しているのだ。周平に何かを囁くように。周平は不思議な光景にしばし我を忘れていた。その時、後ろからひたひたと足音が近づいてきた。汗を拭きながら仲間が歩いて行く。周平は立ち上がって歩きだした。足の痛みは幾分薄らいでいた。落ち葉の合唱が静かに声援を送っている。周平は身内に

力が湧くのを覚えながら林道を進んで、やがて人家が何軒か見える所まできた。出口は近い。林道に入ってからおよそ一時間が経過していた。

 林道を出て、村の道を少し行くと国道146号に出る。そして、この道を2、300メートル下った所に、国道の名をとってつけた食堂・ルート146があった。食堂・ルート146は、行きは第5ポイント、帰りは第13ポイントにあてられた所で、100キロ強歩の重要な拠点である。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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