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2009年1月17日 (土)

遙かなる白根(43)序章 100キロメートル強歩序曲

その中に、第二ポイントのJR六合山荘で見た二人の男の子、がにまたの太った子、茶髪の女の子、そして周平の姿もあった。周平は吾妻渓谷を越えて対岸のゆるやかな斜面の道を黙々と歩いていた。午前9時を少し過ぎていた。周平は立ち止まり、腕時計を見ながら指を折って数えた。もう5時間以上歩いているのだ。周平は、長野原の街並に入ったあたりから足の痛みを感じていた。だんだん痛さが増すようである。前方に目をやると、畑の中の道は遠くの森の中に伸びている。前に進んでいた人たちはもう見えなくなっていた。周平の胸に不安が広がる。まだ3分の1も来ていないのに足が痛い。最後まで歩けるだろうか。夜、長平公民館で待つ母の顔が浮かんだ。

この時、後ろから足音が近づいてきた。

「周平どうしたんだ。足が痛いのか。僕も痛いんだ。この先がポイントの与喜屋公民館だからそこまで頑張ろうぜ」

 一学年上の先輩であった。周平は、励まされて力が湧いてきたように感じた。頑張って小高い丘の上に出ると、前方の曲がりくねった道を二人組と茶髪の女の子が歩いているのが見える。よし、負けるものかと、周平は足を引きずるようにして歩き出した。周平の頭の中の地図では、前方の畑が尽きた先を少し行った所に与喜屋の公民館があって、そこから滝原の林道が始まる筈であった。

 このあたりは、浅間山麓から北流して吾妻川に注ぐ熊川が深い谷をつくり、静かに流れていた。この熊川に落ち込むゆるやかな斜面に農家が点在し、畑と農家の間を縫うように細い道が伸びている。この道の端の小高い所に第四ポイントに当てられた与喜屋公民館があった。周平が足を引くようにしてここに到着したのは、午前9時21分であった。鎌倉哲君を先頭にした一団の子どもたちは、この与喜屋公民館に7時48分に到着し、周平がここに着いた時には10キロ以上も先の、第七ポイント、常林寺を目指してエッサエッサと急いでいた。スタート地点からの距離は28キロである。村の協力で公民館は開放されていて、畳の上に大の字になって寝ころぶ者、足をさすってもらうもの、水をごくごくと音をたてて飲む者など、多くの生徒が集っていた。周平の様子に気付いて誰かのお母さんが靴を脱がせ、足のふくらはぎを両手で揉んでくれる。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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