« 遙かなる白根(40)序章 100キロメートル強歩序曲 | トップページ | 遙かなる白根(41)序章 100キロメートル強歩序曲 »

2009年1月 3日 (土)

遙かなる白根(41)序章 100キロメートル強歩序曲

「周平よく頑張ったな。ここまで歩けたんだ来年は間違いなく完歩だよ」

先生が周平の肩をたたいて言った。修平はこぶしで涙をぬぐいながらうなづいた。

「俺なんか六合山荘の下でギブアップだ。周平はすごいよ」

隣の席の先輩がいたわるように言った。周平は滝見ドライブインまで歩いたことの意味を知った。ここまで歩けたんだ、よし来年はきっと完歩するぞ。周平は窓の外の闇を見詰めて思った。

100キロメートル完歩に向けて

 周平が、更に完歩を達成するために必要なことは、作戦を練ることであった。そして、作戦の中で重要なことはコースをよく研究することである。こう考えた私は、次の年、夏休みに周平と共に、コース何回か車で回り、コース上の山や谷や川、登り坂下り坂、高原や林道などを入念に調べた。その結果、私達の頭には、全行程の地図がかなり明確に描きこまれたのである。

「あの橋を渡って坂道を行くと広地の発電所があるよ。その先が長野原だね。長野原の町を過ぎて左に曲がってゆくと滝原の林道だよ。林道の入口に与喜屋公民館がある。あの林道は行きは楽しいけど、帰りは真っ暗で怖いよ。林道を出ると食堂・ルート146があって、そこからずっとゆくと気味の悪いオウムの施設があって、その少し先がポイントの常林寺だ」

 周平は得意気に自分の頭の中の地図を辿ってみせた。

「常林寺という寺は、浅間山の大爆発の時、溶岩に流されてしまって、今の寺は、その後は再建したものだよ。この近くには、日本のポンペイと呼ばれる、有名な鎌原観音堂があるんだ」

 こんな風に、私たちは折に触れコース上のことを話題にした。

 コースを調べる前は、100キロメートルという途方もなく大きな距離をただ想像して恐れていた私であったが、コースを回って調べた後は、不思議なことに、その距離がぐっと小さくなったように感じられ、恐怖感が薄らいだのであった。同じことは周平にも、その表情から伺えた。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

|

« 遙かなる白根(40)序章 100キロメートル強歩序曲 | トップページ | 遙かなる白根(41)序章 100キロメートル強歩序曲 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 遙かなる白根(41)序章 100キロメートル強歩序曲:

« 遙かなる白根(40)序章 100キロメートル強歩序曲 | トップページ | 遙かなる白根(41)序章 100キロメートル強歩序曲 »