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2008年12月 6日 (土)

遙かなる白根(31)序章 100キロメートル強歩序曲

  周平がこういう態度に出るのはめずらしいことである。

「朝暗いうちから夜中まで歩く、20時間以上も歩くんだよ。みんなが、助け合って、励まし合って、かなり多くの人が完歩するんだ」

「かんぽって」

「最後まで歩き通すことさ。すごいだろう」

 周平はしばらくの間、本吉氏の顔を見たり、外の景色に視線を移したりしていたが、やがて本吉氏の顔を正視して言った。

「僕、山の学校へ行くよ。入試試験があるの」

「体験入学があります。実際に山の学校の生活をしてみるんだ。約1週間。それが試験なのだよ。立派に耐えられれば試験は合格だ」

本吉氏は改まった口調で言った。

「ぼくやります」

 周平はきっぱりと言った。私たち夫婦が6年間迷ってきたことに、周平は自ら決断を下した。私たちは選挙戦の忙しさで同席することは出来なかった。もちろん、それを承知の上での二人の会見であった。結果的には、これがよかったのである。私たちが、同席していれば、つい私たちが多くを話すことになって、周平はわきにおかれ、大人が主役の会話になってしまったであろう。本吉氏は、周平と対等の姿勢で、周平の心に届く言葉で語りかけた。周平は、それを正面から受け止めて判断し結論を出したのだ。正に会見の一方の主役は周平であった。これは白根開善学校へ向けて小さな一歩を踏み出すに誠にふさわしい場面であった。

 そして、それは小さな一歩ではあるが、周平の人生の方向を決定づけてゆく極めて重要な一歩であった。私は、周平の生まれて初めての合格答案を見る思いで、周平の決断に大きな拍手を送った。

体験入学に入る

体験入学の日程は、平成7年4月17日から22日迄と決まった。この体験入学の少し前、4月9日、私は県会議員3期目の選挙で上位当選を果した。周平の体験入学の日を間近にして、我が家は当選の興奮いまだ冷めやらぬ中にあった。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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