« 「振り込め詐欺」・「次官を襲うテロの恐怖」 | トップページ | 「ヒトラーとユダヤ人虐殺」 »

2008年11月20日 (木)

「連続テロと血盟団、五・一五事件」

◇厚生省官僚のトップであった元次官夫妻が惨殺され、同じく同省元次官の妻が刺されて重傷を負った。マスコミや大方の関係者は、年金行政に対して逆恨みする者のテロ行為と見ている。

 新聞には、「問答無用」の暴力という表現も見られる。この言葉は昔、五・一五事件で有名になった。新聞は、昔の政治テロを念頭においているのであろう。昭和7年5月15日、首相官邸をおそった軍人たちに犬養(いぬかい)首相は「話せばわかる」と言った。これに対して軍人たちは「問答無用」と叫んで射殺した。未熟だった日本の民主主義が凶弾に倒された瞬間だった。「話せばわかる」は民主主義を、「問答無用」は、民主主義を否定する思想(ファシズム)を、それぞれ象徴的に現す言葉だった。

 この事件があった昭和7年といえば、西暦1932年である。ニューヨークで始まった世界大恐慌(1929年)の直後で、その波をかぶった日本は大変な不況下にあった。このままでは日本がつぶれる、なのに政治は無策で何も出来ない、このような焦燥感が社会に渦まいていた。

 今日の社会状況は、昭和7年の「五・一五」の頃と似た面もあり深刻である。百年に一度といわれる金融危機とじわじわと深刻化する不況、年金行政に関する信じられないような公務員の不祥事、そして、解決策を見出せない政治に対する不信などである。

 厚生労働省には、年金や高齢者医療について日常的に苦情が寄せられており、中には、ホームの端に立たない方がいいとか、明るい道だけではない、といった脅し文句もあるという。

 今回の事件の犯人が政治テロを目的としたものであるとしたら、これらの社会状況と無関係ではないだろう。犯人は、狂信的な思い込みと誤った正義感から天誅(てんちゅう)を下す事を目的としたのかも知れない。

1120 ◇歴史的な教訓として五・一事件の前段階ともいうべき血盟団事件を思い出す。行き詰まった社会状況を打開するために政財界の要人を一人一殺方式で暗殺するという血盟団の中心人物は、利根郡川場村出身の井上日召(本名は昭・昭を分解すると日召となる)であった。前蔵相の井上準之助や三井合名の団琢磨などが団員によって殺された。血盟団の団員には、東大生3人、京都大生3人が含まれていた。井上日召は、前橋市の広瀬川近くの横地という親戚の家から前中(現前高)に通った。

 血盟団事件とこれに続く五・一事件などによって軍部が台頭し、言論の自由が失われた暗い時代に入っていく。そして、中国に侵出し、日中戦争、太平洋戦争へと悲劇の道をまっしぐらに突き進むことになる。敗北という大きな犠牲を払って憲法に基づく民主主義を手に入れた私達は、これをしっかりと守らねばならない。今回の事件は、この事を突きつけている。(読者に感謝)

★土・日・祝日は、中村のりお著「遙かなる白根」を連載しています。

|

« 「振り込め詐欺」・「次官を襲うテロの恐怖」 | トップページ | 「ヒトラーとユダヤ人虐殺」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「連続テロと血盟団、五・一五事件」:

« 「振り込め詐欺」・「次官を襲うテロの恐怖」 | トップページ | 「ヒトラーとユダヤ人虐殺」 »