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2008年11月24日 (月)

遙かなる白根(28)序章 100キロメートル強歩序曲

本吉氏は、教育委員として、群馬県の教育について、時々興味ある発言をしていた。そしてこのことは、県議会で教育問題に力を入れていた私の注意をひいていた。私は、身近になった本吉氏の存在を通して、改めて白根開善学校に目を向けることになった。

平成6年も終わりに近づき、この年の大晦日、私と周平は、また、赤城神社までの強歩を実行した。周平の足取りは前の年よりしっかりしていて、足の痛みと疲労に、じっと耐えながら歩く私を尻目に、苦もなく長い夜の道を歩き通した。赤城神社の境内は、夜店の売り声、甘酒を振舞う村の人、そして参拝の人々でにぎわっていた。雑踏の中で、上気した周平の得意そうな顔が私には眩しく映った。周平の表情を見て、既にこの頃、白根開善学校の100キロメートル強歩のことを耳にしていた私は、周平と二人で実行した小さな強歩と、途方もなく大きな白根の強歩を、漠然と重ね合わせ、周平が100キロ強歩に臨む姿をふと想像してみたのだった。

明ければ、平成7年、この年4月には、また私の県議選が行われる。毎度のことながら、年末年始から我が家は、戦争のような状態に入っていた。周平のことを気にしながらも、私たちは選挙に向けて回り始めた大きな渦に否応無しにまきこまれていった。

2月のある日、県庁内の廊下で本吉氏と会った私は、周平のことを話してみた。

「ほう、そういうお子さんがおられるのですか。うちの学校へ入れてはどうですか」

本吉氏の表情はすごく真剣である。私の話を聞いて周平に興味をもった様子である。

「入れてもらえるかどうか、また、息子がやってゆけるかどうか、心配です」

私は、本吉氏の真面目なまなざしを受けとめて、わくわくする気持ちと不安のまじった複雑な感情で答えた。廊下での会話は、そのままで終わった。

選挙が近づいて、目まぐるしい後援会活動にふりまわされる中で、3月を迎え、周平は芳賀小学校を卒業した。

☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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