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2008年11月16日 (日)

遙かなる白根(25)序章 100キロメートル強歩序曲

「もうそこが南面道路。お父さんがこどもの頃、住んでいた所に近い。頑張ろうな」 私たちは、間もなく、再び東西を走る道路に出た。赤城南面道路と呼ばれる国道246号である。ここまで来ると、風もいくらか治まり、ふっこしも止んでいた。「疲れたな。お前もよく頑張る。少し休もう」私たちは、南面道路の道端の石に腰を下ろした。「お父さんのこどもの頃の話をしてやる。この道を少しゆくと橋にかかる。大穴川という川にかかったあらい橋という小さな橋がある。その橋の所を少し北に登ると大崎のつり堀屋さんがあって、そのあたりにお父さんは住んでいた。そこから鼻毛石の小学校まで毎日裸足で通っていたんだ。」「えっ、裸足で。くつがなかったの」周平が大きな声で口をはさむ。「いや、ゴムぞうりとか下駄という履物はあった。しかし、学校は遠いので、履物が邪魔なんだ。裸足の方が走ったりするのに気持ちがいいんだ。お母さんに怒られるから家を出るときは下駄をはいて出るけど、すぐに草の中や桑の根っこに下駄をかくして裸足になる。時々、下駄が見つからなくなったり、誰かに盗られたりしてお母さんにうんとしかられるんだ」「お母さんて、家のお婆ちゃんのこと」「そうだよ。道も舗装されていない石だらけの道だけれど、平気なんだ。道に時々蛇がいたり、石垣の間にはヒバリの巣があったりして、蛇をつかんだり、ヒバリの卵をとったりした。学校の勉強よりいたずらの方が面白いという子も多かった。学校が嫌いで、途中山に入って遊んでいて、学校が終わるころしらばっくれて家に帰る子もいた。それを中返りといって、このあたりより北の子の中には、そういう子が何人かいたんだ」「へぇー面白い。僕も昔の子ならよかった。そうなら、毎日中帰りするんだ」「中帰りばかりしていた子もね、今は、立派なお父さんになって、真面目に仕事をしてね、頑張っているよ。学校の勉強が出来なくても心配ないんだ。山で育った子は、みな、立派な大人になっている」私は言葉を切った。  ☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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