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2008年11月 9日 (日)

遙かなる白根(23)序章 100キロメートル強歩序曲

「何の勉強なの。歩いても僕の脳味噌お利口にならないよ」 周平はとまどっている。「頑張ることの勉強なんだ。真面目に努力することを勉強しているんだよ。人間はね、真面目に努力することがうんと大切なことなんだ。周平が今晩、赤城神社まで歩ければ、この努力すること、つまりね、頑張ること、それをうんと勉強したことになるんだよ。そして自信をもつことが出来て、他のことでも頑張れるようになるんだ」「自信て」 周平は、またたずねた。めずらしいことである。「僕だって出来るんだという気持ちさ。心の中に湧いてくる力だよ」 私は、一言一言をかみしめるように言った。 私の背中には汗がにじんでいた。頬を叩く風が爽快に感じられたが、それよりも、周平と初めてこのようなまともな会話が出来たことが出来たことが私の心を弾ませていた。「周平、みてごらん」私は登って来た方向を振り向いて言った。そこは小坂子の坂も終わりに近い所で、眼下に前橋の夜景が広がっていた。冷たい赤城おろしは、あのあたりまで届いているのだろう。闇の彼方には、別世界のように街の灯が、風にあおられた火のように、きらきらと広く静かにゆらいでいる。「わあーきれいだ」突然すごいものを発見したように、周平は大きな声をあげた。「みんな、紅白歌合戦を見ているのだろう。お母さんも、そろそろ出発の準備を始めたかも知れない。さあ、周平、頑張ろう」「うん、僕、頑張るぞ。お母さんが待っているんだもんね」周平の声も明るく弾んでいる。 妻は車で赤城神社までゆき、帰りは、皆で車に乗ることになっていた。 私たちは黙々と歩いた。初めは、すぐに話しかけた周平も今は黙って歩いている。時々遅れがちで、私との間の距離が広がるが、私が速度をゆるめて調節すると、闇の中にひたひたと小さな足音が近づいてくる。 やがて、二人は宮城村の市之関まで来た。 ☆土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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