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2008年11月 4日 (火)

「10km。58分20秒。素晴しい1日だった」

081103_111616 ◇ぎりぎり頑張ってゴールに駆け込んだ時の達成感と満足感はたとえようもない。68歳の誕生日の4日後の大事業成就の瞬間だった。

「第18回、ぐんま県民マラソン2008」、「種目10km男子」である。完走証を手にして嬉しかった。完走記録58分20秒、種目順位1572位とある。昨年の記録は、56分32秒、順位は1308位だった。

 今年は55分代を目指し、体重を4kg以上減らし、かなり走り込んで臨んだ。しかし、実際走ってみてあまり調子がよくなかった。やや風邪ぎみが原因か足が重かった。マラソンの体調は微妙なものだ。プロの選手が直前に棄権したり、途中で勝負を放棄したりする例をよく耳にするが分かる気がする。

 10km男子は、3001人参加し、私の登録番号は1位であった。スタート係の千葉真子さんの澄んだ声が響きピストルが鳴った。一斉に走り出す。ランナーたちの始めのスピードはすごい。全てのランナーが私を追い越していくようだ。私は流れの中に取り残されていく。私はいつも、スタートラインの近くに立って合図を待つ。このあたりは、「記録を狙う人」という表示が掲げられている。私を追い抜く人たちは、恐らく記録を狙う速い人であろう。

 バラ園の裏を回り北上して再び利根川べりの国体道路に出た時、又、昨年と同じように、背中を曲げて両手で水をかきわけるようにして走る老人が私を追い越した。がっしりとした背中は昨年と変わらない。

 その姿を見て私はファイトを燃やし老人を追い抜いた。スッス・ハッハ、スッス・ハッハ、私は視線を斜め下に向け懸命に走る。私の視界に様々な脚が入っては消える。少年の脚、少女の脚、老人の脚、そして、はっとするような女性の美しい脚もある。ランナーたちは、皆真剣に考えて決断して参加しているに違いない。それぞれの脚は、それぞれの人生を語っているように見えた。

 私の走る仲間の一人で、私よりかなり先を走っていた人が終了後次のような話を聞かせてくれた。背中を曲げた老人が、左右に手を振って泳ぐように走り追い越していく。何かを口走っているので振り向く人もいた。耳を傾けると、「チクショウ・チクショウ」、「何をこのくらい」と聞こえたという。私が追い抜いたはずのあの老人に違いないと思った。後でわかったことだが、この人は、今大会最高齢、91歳の大河原さんである。レース中は腰からももにかけて痛みがあった。太平洋戦争従軍中に受けた古傷が原因だという。「チクショウ」の声の意味が分かった。あの後ろ姿は大河原さんのすごい人生を雄弁に語っていた。60歳を過ぎてマラソンを始め県民マラソンは80歳から参加した。 

昨年は90歳でホノルルマラソンに初出場し、42・195キロを8時間かけて完走したという。大河原さんのような方が県民マラソンで頑張る姿は、ランナーだけでなく全ての県民に夢と希望を与えてくれる。私にも新たな目標が出来た。完走後、千葉真子さんの晴れやかな笑顔に出会い握手を交わした。

★土・日・祝日は、中村のりお著「遙かなる白根」を連載しています。

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