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2008年9月27日 (土)

遙かなる白根(8)序章 100キロメートル強歩序曲

それは、大会の舞台の上で、集まった支援者に対して土下座して頼むことであった。私と妻と、娘のゆり、三人が、そういう形をとって、どうか当選させて下さいと頼めというのだ。当時、自民党の浜幸がよく土下座をやっていたのを私は不快な気持ちで見ていた。あれは、民主主義の根本に反する。あれだけは、やりたくないと思っていた。それが現実の問題として身にふりかかってきたのだ。「もう、選挙はしたくないわ、なぜ、そこまでしなければならないの」私は、妻の言葉に何と答えてよいかわからなかった。広場を埋め尽くした人々の前で、三人が土下座する場面を想像すると、それは、絶え難いものに思えた。しかし、ボランティアで、必死に支えてくれる選対幹部の人たちの苦労を思うと、断れる筈はなかった。選挙とは何か。それは、民主主義を支える重要なものだ。社会のために働こうとするのに、なぜ、卑屈な態度に出なければならないのか。政治姿勢をみて判断してほしい。こんな道を通らねば当選できないとすれば、理想をかかげて選挙に出る人はいなくなる。そんな思いが、私の胸にあった。しかし、前回落選し、この選挙に全てをかけ、その投票日が目前に迫っているという現実の重さは、そんな理屈を口に出すことを到底許さなかった。「土下座という言葉が悪い。そう考えないようにしよう。ものを頼むとき、畳の上に、手をついてお願いするじゃないか。高い台の上で、立ったままで、一番大切なことを頼むのは失礼なことだ。だから、座って、頼む、そういう風に考えようじゃないか」苦しんで、考えた末の私の言葉に対して、妻は何も言わなかった。その時がやってきた。集った人々は、約2千人。「最後のお願いです。どうしても今度は当選させて下さい。お願いです」こう言って私は、計画通りひざを折り手をついた。妻と娘が私にならって行動した。私は、手をつきながら人々の方を見た。人々の姿が、大きなかたまりとなって、ぼうっと、私の目に飛び込んだ。そのとき、そのかたまりの中の小さな一点が、ぼやけた景色の中で、そこだけにはっきりと光があてられたように、私の頭に鮮明に描かれて過ぎた。

☆ 土・日・祝日は、中村紀雄著「遥かなる白根」を連載しています。

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