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2008年9月20日 (土)

遙かなる白根(5)序章 100キロメートル強歩序曲

芳賀小学校の6年間、周平が友と呼べるものはおそらく一人もいなかったことであろう。周平と話し合って、周平のいうことに耳を傾ける生徒は、一人もいなかったであろう。休み時間も、校庭の片隅でぽつんと一人で遊んでいた周平の姿が急に思い出された。<周平はなんとかなる>、胸に熱いものがぐっとこみ上げた。

私は音をたててドアを開けた。二人の少年は、突然の闖入者に驚いて振り向いた。

「あ、お父さん」

「もう集合の時間だな。準備はできたのか」

「うん、準備はできたよ。今、裕介と完歩の話をしていたんだ。ぼく頑張るよ。お父さん、何しに来たの」

周平は、同室の者を気にしているらしい。この学校では、親が面接に来ることをあまり歓迎しない。それは、生徒が全国の遠い地域から集っていて、めったに親が来られない子の立場を考えてのことだ。

「君たちに、頑張れと言いたくて来たんだ。裕介君も頑張っておくれ。周平、頑張れよ。お母さんは、JR六合山荘に居る。完歩を期待しているよ。お婆ちゃんもお姉ちゃんも、頑張るように言っていた。では、お父さんはこれで帰る。周平頑張れ、裕介君も頑張ってね」

強歩は、午前3時30分集合、4時スタートである。集合の時が近づいていた。

私は体育館の片隅で生徒たちの様子を見ていた。ぞくぞくと生徒たちが各寮から集っていた。背にはリュック、手に懐中電灯、胸にはゼッケン。黙々と動いている。やはり、一様に緊張しているようだ。これから、それぞれの体力と気力の限界に挑戦して100キロ強歩という大事業に臨もうというのだ。

肩に届くほど髪を長くした男子生徒、ちょんまげのように髪を後ろで束ねた少年、茶髪の可愛い顔をした女子高生、耳にイアリングをした女の子もいる。みな真剣な目つきだ。それぞれの服装や身なりがそれぞれの個性をよく発揮しているようで、彼らの一人一人が、私には魅力的に見える。

☆ 土・日・祝日は、中村紀雄著「遙かなる白根」を連載しています。

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