シベリア強制抑留『望郷の叫び』(134)第6章 スターリン大元帥への感謝状
この感謝状は、最後に改めて、大元師に対して宣誓する。
「敬愛するイオシフ・ヴィッサリオーノヴィッチ!
私たちは、全世界勤労者の愛する天才的教師たるあなたの前に、そして偉大なる社会主義ソヴィエト同盟の人民のまえに、いまここに厳粛なる決意にもえて宣誓せんとするものであります」として、次の4つを誓っている。
①ソヴィエト人民とのゆるぎなき友誼のために献身的に闘う。そして、私たち
がこの目で見かつ学んだソヴィエトの国の真実を日本のすみずみまで、全日本にひびきわたらせる。
②アメリカ帝国主義、日本軍国主義のやからどもが、私たちを再び犯罪的奴隷兵士と化することを断じて許さない。そして、解放軍たるソヴィエト軍に対し、たとえ大地がはりさけるとも二度と武器をとらない。もし再び、帝国主義者どもが、日本を、ソヴィエトに対する戦争の舞台にしようとするなら、私たちは死をも恐れず決起し帝国主義者と闘う。
③私たちは、社会主義の事業と平和の事業に、あくまで忠誠を守りぬく。
④私たちは、この聖なる誓いを、わが瞳のごとく、わが魂のごとく守りぬき、断固としてそれを果たしぬく。
そして、スターリン大元師に対して、「全世界勤労者の命であるあなたが、ますます健康に、限りなき長寿を保たれんことを」という言葉を捧げ、最後に、次のような万歳と賛美で結ぶのである。
日本共産党万歳!
ソヴィエト同盟に栄光あれ!
ソヴィエト軍に栄光あれ!
万国勤労者の師父、敬愛するイオシフ・ヴィッサリオーノヴィッチ・スターリン万歳!この感謝状の中で重要な点は、最後の宣誓の部分である。この文は日本人が自主的に作った形をとっているが、ソ連の指導の下に、また、ソ連の意をくんで作られたことは間違いない。ナホトカで帰還船に乗るとき、署名しなければ乗せないと、ソ連軍将校に言われたという証言の存在はその間の事情を物語るといえよう。
ソ連とすれば、日本人が、帰国後に感謝状で宣誓した通り共産党を支持する行動をとるかどうかが一番気がかりなことである。だから多くの日本人に秘密の誓約書を書かせた。
☆土・日・祝日は、中村のりお著「望郷の叫び」を連載しています。
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