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2007年5月 6日 (日)

『上州の山河と共に』連載(75)「決戦の時来る」

 これではいけない、と私は思った。仮りにも、私は一軍の将である。私の弱気が外に現われれば、私の為に、私を信じて懸命に動いてくれている人達に大きな悪影響を与える。そんなことでは勝てる筈がない。そこで、私は、細かいことは気にせず、人事を尽くして天命を待つという心境でゆこうと決意した。

 2月に入ってから選挙事務所設営の場所を捜し始めたが、これがなかなか見つからない。選挙事務所としての条件は、まず、多くの人が集まれる広い場所であること、そして、人目に付き易い場所であることである。交通の便が良ければなお好都合であった。

 前橋市内でこのような条件を備えた土地を捜すことは、容易なことではなかった。もっと早くから研究して捜しておけば良かったと悔やまれたがもともとそんな余裕はなかったのだから仕方のないことであった。

 3月になって、やっと、これはと思うところを見つけることができた。それは、芳賀工業団地の一角で、工場建設の予定地とされている所であった。所有者である食品会社の社長は、私の熱心な後援者で、建設着手までは3ヵ月ほどあるから是非使って下さいと言ってくれた。私は、これで、いよいよ戦う拠点が確保できると、大変喜んだ。

 しかし、その喜びも束の間で、前橋市の工業課からの電話で消し飛んでしまった。

それは、工業団地として分譲する際に、10年間は、譲渡の際の目的外のことに使用しないという約款が交わされているが、選挙事務所用地として使用することは、この約款に違反するというものであった。

 私達は、これを聞いて、大変不服であった。何と形式的な解釈であろうか。若手の後援会員の中には、これは、他陣営の謀略だ、といって怒りを顕わにする者もいた。

 約款の趣旨は、その企業の業種や目的を審査して、工業団地進出の便宜を図るのだから、用地の所有権取得後直ぐに他の目的に使用するようでは、工業団地を造成して便宜を図る目的が達せられないことから、所有権取得後も、一定期間他の目的の為の使用はしないという制約を進出企業に課す点にあると思われる。

 従って、極く短期間、プレハブの建物を建てて、選挙事務所として使用することは、この約款の趣旨に違反しないのではないか、と考えられる。

しかし、市当局に抗議して、争っているうちに選挙戦に突入するようなことになれば大変なことになると考えると、私達は、当局の指示に従って、引き下がるより他はなかった。

 我が陣営の落胆ぶりは大きく、告示迄の日が短いことも合って、幹部の間にも動揺の色が濃く感じられる程であった。私は、このような差し迫った状況になって、まだ選挙事務所の用地すら確保できないということが世間に広まった場合のマイナス効果を恐れた。福島浩は、さすがに冷静であった。

「新人が選挙に出る時は、こんなものなのだろう。予想されたハードルと考えて乗り越えなければならない」 彼は、自分自身に言い聞かせるようにつぶやいた。

☆土・日、祝日は以前からのご要望により「上州の山河と共に」を連載いたします。

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